BUSINESS | BUSINESS CO-CREATION

CASE STUDY

象印マホービン株式会社 様

炊飯ジャーの開発過程で出る試食ごはんを活用。
サステナビリティを大切にした新規事業として、
本業由来原料のアップサイクルで実現した
商品開発。

象印マホービン様が、炊飯ジャーを開発する過程で、美味しいごはんを提供したいという想いで何度も行われる「ごはんの試食」。試験炊飯で生まれるごはんを付加価値あるエタノールへアップサイクルし、「ごはんで作った除菌ウエットティッシュ」を開発・発売されるに至った経緯や担当者の想いについてお話を伺いました。

カテゴリー
業種製造業
未利用資源ごはん
商品ウエットティッシュ
対談ご参加者
象印マホービン株式会社
新事業開発室 室長 岩本 雄平様
※取材当時はマネージャー
新事業開発室 サブマネージャー 栗栖 美和様
株式会社ファーメンステーション
代表取締役 酒井 里奈
※聞き手 ファーメンステーション担当

INTERVIEW

新規事業検討の中で
課題として挙がった「ごはんの残渣」
早速ですが、象印マホービン様とお2人の所属部署の簡単なご紹介をお願いいたします。
岩本様
新事業開発室の岩本です。象印マホービンは、1918年に創業し今年で104年目を迎え、本社を大阪に構える会社です。
もともとは、ガラス魔法瓶の中瓶を作る部品の製造業から始まり、やがてガラス魔法瓶全体を作るようになり、そこからステンレス魔法瓶や電気ポット、炊飯ジャーと広がり、今では電気製品と非電気製品の両方を扱う家庭用品メーカーとなっています。
会社の規模は、連結で約1,300名の社員が在籍しています。私たちは、新事業開発室という創立100周年を迎えたタイミングでできた部署に所属しています。
象印マホービンは、基本的にはモノを開発して作って売るという売り切りの商売が基本ですが、これから先100年を考えていくにあたっては、サービスとしての価値提供や、ストーリーを含めた商品販売など、新しいビジネスを興すことが必要になるとの判断の元、できた部署になります。
お2人は、新規事業の中でのミッションをお持ちなのですか?
栗栖様
同じく新事業開発室の栗栖です。トップから数値目標やターゲットの領域などは定められていないので、既存業務のルーティンから外れて、自分たちでどういうことをすべきかを日々考えています。その中で、ただ単にビジネスになるというよりも、社会課題の解決に繋がるようなビジネスを作り、特にその中でも象印の強みがある食と暮らしに関連することは、弊社がやるべき領域として探索をしてきました。
岩本様
会社からは、象印らしい領域で新しい事業を興してください、とだけ言われています。自分たちで考えてやっていくということで、この新事業開発室で経験することは、会社としての勉強にもなる、という意味合いがあり、次の世代を育てる部署でもありますね。
会社として非連続な成長を実現する上で、自社のアセットをうまく活かしながら、どこに飛び石があるのかを考えなさい、ということでしょうか。
栗栖様
はい、そうです。既存部署では、営業部門は毎月の売上を追い、商品開発・企画の部門は、長くても約3~5年のスパンで考えているので、会社として何をすべきか中長期のことを考える機会は日常的に持ちづらい実情があります。その中で私たちは、自社が今どういうことをしていて、将来何をするべき会社なのか、を考える役割だと思っています。
ちなみにその4人の経験としては、岩本は商品企画が主で、ゼロから商品を生み出して設計も担当しており、私は店頭での販促活動をしていました。他の2人は主力の炊飯ジャーを量産設計する担当、本部商談の営業担当など、もともとの得意分野は違いました。
それぞれの得意な分野を組み合わせて、何か新しいことを考えていくチームになっているのですね。今回、2社での取組みに至るまでの背景や経緯をお話いただけますか?
栗栖様
私たちは以前、週ごとにテーマを変え、課題を発見して実現可能性までを模索していた時期がありました。1つのテーマとして食のソリューションを考えており、献立を考える食前からごはんの残渣の行き先という食後までの広い領域で考え、食品ロスの課題を話していました。そこから、炊飯ジャーの開発過程で発生するごはんを活用できないかという話になったのですが、開発の担当者がごはんの種類や状態を見て仕分けをするとなると、手間がかかり負担になってしまうことから、検討を中止していました。
残渣が出ているけれども扱えないということで、一度対象外になられたのですね。
栗栖様
課題があるのは分かり、状況もある程度メンバー間で共有はされたのですが、すぐに実現するのは難しく、一旦置いておくこととなりました。ですが、個人的に非常に気に掛かっていたので、展示会などでお米の再利用という言葉を見かけると、チラシをもらったりお話を伺ったりしていました。
ごはんにまつわるバリューチェーンの川上から川下まで色々な観点がある中で、ごはんが残渣として出ているというお話は、早い段階から挙がっていたのですか?
栗栖様
早い段階から話していました。コンポストを作ろうという話が出た時期もあり、実際にコンポストが置かれている場所へ見に行ったりもしていましたね。
新事業開発室の方々でお話する前から、過程で出る残渣などは会社全体の課題として認識していたのですか?
岩本様
もともと課題としていましたので、開発で炊いたごはんも捨てていたわけではなく、リサイクルして農作物の堆肥に転換していました。ですが、それ以上は考えられておらず、お金をお支払いして再利用する形でしたので、もっと有効利用できたらと皆思っていましたね。
サステナブルな事業を検討する中で
生まれた出会い
一度対象外になられた後、どのようなきっかけで改めて取り扱うことになったのですか?
栗栖様
私はサステナブル領域の事業に取り組みたくて、経済産業省とJETROが主催するグローバル起業家等育成プログラム「始動Next Innovator」に昨年度参加していたのですが、そこで、メンターとしてファーメンステーションの酒井さんと出会ったことが大きなきっかけです。
このプログラムには約80名のメンターの中から7名の方にメンタリングを申し込む制度があり、私は酒井さんに申し込みました。お米を活用した事業をされていたので、酒井さんの事業のお話もお聞きしたくお願いをしたことが、協業のきっかけとなりました。
具体的にお話を聞かれた時は、どのような印象でしたか?
栗栖様
私自身、サステナブルな事業を実現したい想いはあっても、言葉の表現に落とし込めず苦労していたのですが、酒井さんにメンタリングしていただく中で、私が想っていたことを言葉にしていただきました。
今まで私なりに色々と調べていたのですが、エコに関する事業はたくさんあっても、それが本当にエコなのか、長期的に考えられているサステナブルな事業なのか分からないところが引っかかっていました。ご一緒する方とは、長期的なサステナブル事業としてしっかり考えられたものを作っていきたいと思っていたので、ずっとこの領域で向き合われているファーメンステーションさんとご一緒できたら、とてもいいものができそうだと思いました。
酒井さんは、栗栖様と最初にお話した時にどのような印象を持たれましたか?
酒井
栗栖様とは、始動プログラムで初めてオンラインでお目にかかりました。このプログラムでは、参加者の皆さんそれぞれがビジネスプランを持っていて、そのお話を伺い思ったことをお伝えする時間があるのですが、栗栖様は気持ちに残るプレゼンテーションをされ、素敵な方だなと思ったことをとてもよく覚えています。
育ってきた中で環境課題に対して興味を持たれ、そのような強い想いを持って象印マホービンに入られて、社長直轄のチームで新規事業を作る中で若い世代として、これからの地球環境をしっかり考えてビジネスを作っていきたいと、栗栖様が仰っていることも素晴らしいと思いましたし、応援している会社もとても素敵だなと思いました。
また、象印マホービン様が持っている素晴らしい技術を新しいビジネスにしようとする栗栖様の姿に共感して、応援したいと思ったのが最初です。心から会社を愛していらっしゃることが伝わってきました。お話しているうちに、ファーメンステーションの技術でご一緒したら、やりたいと仰っていた世界観に近づけるのではないかと思い、こちらからも弊社の紹介もさせてくださいとお願いをして、別途お時間をいただきました。
スタートアップと試みた
新規事業創出のチャレンジ
お互いに共感しあう部分が当初からあったということですね。最初はお互いに補完し合える感触を得られたと思いますが、始まってからは両社でのやり取りや、社内での調整などスムーズに進みましたか?
栗栖様
スムーズだった部分と、そうでなかった部分がありました。スムーズだった部分は、以前チーム内でごはんの活用について検討していたので、メンバーの共感をすぐに得られたことです。
当時は、新しいものを生み出すことに苦労していましたので、ファーメンステーションさんの技術と弊社のごはんの掛け合わせで、世に出せるものができるかもしれないという期待感がありました。完成品もハッキリしていたので社内提案資料も作りやすく、四半期に一度社長に提案をする機会で社長からお墨付きをいただけたことは大きかったですね。
一方、プレスリリースを出すに至るまでは大変でした。新規事業の生み出し方を勉強するなかで、まずは小さなところから始める、ということが私の印象には残っていました。
私たちにとって小さく始めることの一つとして、プレスリリースを出して、デザインや文言など、どのようなところに反響があるかを知ることがありましたので、最終製品が出来上がるまで待つのではなく、世の中に出せるものはなるべく早く出していきたかったのですが、前例がなく社内での調整が大変でしたね。
岩本様
今までは、商品が完成し、発売時期も決まった状態で、リリースを出していました。ですが栗栖の提案は、このような商品を作りますというリリースでしたので、会社としては前例がなく、社内では結構議論がありましたね。
そこを突破するには、社長の了解だけではなく、作った商品をどのようなところに販売していくかの道筋を示し、経営層全員の承認をもらうことが必要でした。
最終的には商品がお手元に届く前にリリースを出されたと思いますが、商品がない中でリリースを出したのは、象印様としては初めてでしたか?
栗栖様
商品発売前の2021年3月にリリースを出しました。リリースの出し方だけでなく、スタートアップとの協業も弊社としては恐らく初めての試みだったと思います。
最終的にはご理解いただき、会社として承認されたと思うのですが、そこの壁を超えられた理由は何だったと思いますか?
岩本様
最終的には栗栖の執念だと思います。栗栖が周りを巻き込んでいきましたね。
商品としては2社のコラボレーションですが、貴社にとって新しい事業の作り方や、世の中への出し方など、新たな挑戦となる取り組みになったと感じました。
栗栖様
そうですね。部署として初めて世に出た新規事業が2021年3月16日に開店した象印銀白弁当で、その直後の2021年3月31日にファーメンステーションさんとの協業のプレスリリースを出したので、部署として初めて世の中に新規事業を出していった月でした。
栗栖様が酒井と出会われてこのような取り組みの提案を持ち帰られたと思いますが、岩本様の観点から、その提案を初めて聞いた時の印象はいかがでしたか?
岩本様
アイデアとしては面白く、既にファーメンステーションさんに技術がある状態なので、取り組みやすいというのが第一印象でした。
お話を聞いた当時、新事業開発室として丸2年が経とうとしていて、特に栗栖の担当案件がなかなか前に進まず焦っていました。私自身も彼女に1つの成功体験を持ってほしいと思っていたので、ファーメンステーションさんと一緒に商品化することは1つの経験としても、とても良いと感じていましたし、開発に関してはファーメンステーションさんに実績がありましたので、私の立場から見て非常に取り組みやすいと思っていました。
ですが、社内からは弊社でアルコール商品を扱うことができるのか、本当に利益が出るのかなど、様々な声がありました。今回は通常の商品とは異なり、実験的な取り組みであることを社内で説得していくことが難しかったですね。
既存事業との比較で検討されてしまうと、どうしても心配する声が上がりやすい点は、大企業が新規事業に取り組まれる時の最初の壁の高さかと思いますが、社長直轄の部署であっても今回の件で苦労されたのですね。
岩本様
はい、苦労しました(苦笑)
反対に、ファーメンステーション側から見て、取り組み始めてからの印象的なプロセスはありましたか?
酒井
商品化できそうだという印象はありましたが、炊いたごはんは日常的に扱っているものではないので、一体どのようなものがくるのか不安もありました。実際に実物を見せていただき、様々な種類のお米を炊いていらっしゃることを知れたことも学びになりました。最終的にはオーソドックスに白米に決め、何度か実験をしてアルコール化しました。
そこから先の商品化に関しては、経験もありましたので、私たちとしてはきちんとした製品をお届けするために着実に進めていきました。
今回、象印様に大きな決断とチャレンジをしていただく中で様々なやり取りがありましたが、色々な視点を持って、安心していただけるものを広く世の中に届けることを改めて感じることができ、私たちにも大きな学びがありました。
栗栖様
自分が消費者でしたら、ウエットティッシュの協会の認定マーク(開発した商品にも付与されている一般社団法人日本衛生材料工業連合会の除菌マーク)がついていたら何の不安もなく使いますが、自社の商品として販売するとなると、社内からは本当に大丈夫なのかと、あらゆる角度から見られ、それに対して答えていくことはとても大変でしたが、酒井さんにはたくさんご協力いただきました。
進められる中で、栗栖様が問題を乗り越えたと感じ、視界が開けたタイミングはありましたか?
栗栖様
やっていることは間違っていなかったと思ったのは、プレスリリースのタイミングでした。良い評価を頂くこともでき、まずはスピード感をもって進められたことが良かったです。
また、プレスリリースでは仮デザインとしてパッケージに「ぞうさん」(象印マホービン社のマスコットキャラクター)のマークを入れておりましたが、プレスリリースを見たデザイン関係の方から貴重なご意見も頂くことができました。
構想段階でも世の中に出すと、新たな会話が生まれ、改善に繋げられる機会が増えることなどを実感し、オープンイノベーションを少し体感できたと思っています。プレスリリースを出してからも、文言については岩本と修正を繰り返し、初めて手に取るお客様を想像しながら改善を行っていきました。
貴社の既存事業での商品だと難しいアプローチだったと思いますので、そのような点でも新事業開発室でトライする意義があった開発プロセスでしたね。モノがない中で商品化を進めていた当時、色々とご苦労もあったと思いますが、実際に試作があがり、モノが見えてきてからの社内のご反応や、販売に向けて社外の方とも話し始められた時のご反応はいかがでしたか?
栗栖様
社内では、象印が今までごはんを捨てていたと誤解されないか、ブランドイメージを損なうのではないかなど指摘がありました。また本当に売れるのかという話は何度も問われましたが、新規事業としてやってみないと分からないことはどうしても残りますので、まずはスモールスタートでチャレンジさせていただけるようお話していました。一方、同世代からの評判は良く、応援してくれる方が多かったですね。
岩本様
社内では特に若い人からの評価が高く、この商品いいですねと言ってくれる方が多いですね。
社内には、今までごはんを捨てていたと勘違いされるのではとリスクを気にする方もいらっしゃったということですが、実際そのような誤解は生まれましたか?
栗栖様
きちんと説明すれば誤解もなく受け止めてくださいましたし、アップサイクルという言葉の理解にも繋がりました。非常に評価していただいたおかげで、2回ほどサステナブル系のイベントに登壇し、発売前に外部に応援してくださる方が増えていきました。
俯瞰してみると、プロトタイプの状態でお客様の声を聞いて反映しながらブラッシュアップしていき、またそれによって社内の理解も得ていく進め方は、スタートアップがプロダクトを作っていくプロセスに近いですね。
栗栖様
そうありたいと思っています。
生活者に見えづらい開発過程を知り
課題解決につなげる
酒井さんは、プレスリリースもありましたし、商品ができた後は外部にお話しすることも増えてきたと思いますが、社外からのご反応はいかがでしたか?
酒井
まずは、圧倒的な可愛さにパッと見た時の評判がすごくよかったですね。それから、ごはんって何ですか?と聞かれて象印様のお話をすると、認知度がとても高く、美味しいご飯が炊ける炊飯ジャーを作っている会社と皆知っていました。
私自身深く考えたことがなかったですが、開発の裏ではずっと美味しいごはんのために試作でごはんを食べている人がいらっしゃるが、全て食べるのは無理というシチュエーションは誰でも思い浮かべることができますよね。そのごはんは以前から堆肥で活用されていますが、更に身近に使えるものになることはとても面白いとおっしゃる方が多く、自分事として考えられる方がとても理解しやすいのだなと感じていました。
栗栖様
酒井さんが、こんなに想いを込めて炊飯ジャーを作っているのですね、と共感してくださったのが、とても嬉しかったですね。
酒井
写真も拝見しましたし、ずっと炊飯ジャーの研究開発をしてごはんを食べていた方のお話を伺い、尊敬と感謝の念が湧きました。そのような日々の成果の恩恵を受けて今の商品がありますし、貴社の商品への向き合い方が伝わる、単にごはんから作ったウエットティッシュというだけではないお話だと思いました。
普通でしたら未利用資源を出さなければ良いという話になりますが、貴社にとっては炊いたごはんは商品開発の過程で必然性の高いものでしたので、是非活用したいと思いましたし、私にとって是非扱いたい未利用資源でした。
栗栖様
ありがとうございます。
このような取り組みは、資源循環という意義もありますし、想像が及ばなかったプロセスについて、世の中の人がその購買を通じて理解して学ぶという意義も大きくありそうですね。
栗栖様
そうですね。飲食店からの廃棄ロス削減も大事ですが、企業の開発過程の物がどうなっているかにはあまりスポットライトが当たっていなかったと思うので、そこに取り組まなければいけないと思いましたし、他の会社とも一緒に活動できたら嬉しいと思っています。
面白いですね。例えば、おにぎりを握るマシンを作る会社とかありますよね。一般的に言うと家にはないですし知らないですが、実は開発過程で色々な物が出ている企業がいっぱいあるということを知り、私たち自身も知らない世界が見えた感じがしました。
栗栖様
食品メーカーや調理家電メーカーの方からの反響は特に大きかったですね。やらないといけないよねという話題はよく出ます。
炊いたごはんを最後の一粒まで
大切に使い切る
今後は、業務用など企業向けの商品を扱う会社とも、そのような取り組みが生まれていったら面白いですね。今回のウエットティッシュですが、今時点ではどのように一般の方や企業向けに販売していらっしゃいますか?
栗栖様
一般の方は、Webでは象印ダイレクトという直販サイトで、リアルでは新大阪駅にある「象印銀白弁当」というお弁当屋さんと、難波にあるごはんレストラン「象印食堂」で購入いただけます。法人向けは、ノベルティとしてや、セミナー開催時にアルコール除菌の代わりとして使って頂いています。
あとは、ご縁から生まれた商品いうことで、引き出物に使いたいといってくれた方もいらっしゃいました。ストーリーに共感してくださり、ノベルティとして活用してくださる企業様や個人の方を引き続き探しています。
象印銀白弁当と象印食堂は、貴社の炊飯ジャーで炊いたごはんの美味しさを世の中に広げていくチャネルとして展開していらっしゃり、同時に開発する過程ででてくる試作のごはんから作ったウエットティッシュもそこで買えるということですね。
栗栖様
象印は美味しいごはんを食べてもらうための会社であるという考えのもと、銀白弁当や象印食堂は、炊飯器を買わなくてもお店に来たら美味しいごはんが食べられる場所として提供しています
岩本様
そして今回のウエットティッシュを販売することで、炊いたごはんを最後の一粒まで大切に使い切る、という取り組みになっています。私たちは、ごはんに生かされている会社ですので。
象印マホービン様として、今回のウエットティッシュに限らず、今後は事業を通じてどのように社会課題に向き合い、どのような世の中を作っていかれたいですか?
岩本様
先ほどのお話に繋がりますが、まずは美味しいごはんを提供し続けたいというのが私たちの想いとしてあり、50年後100年後も今と同じ美味しいごはんが食べられる場を提供するということも弊社の使命だと思っています。
そういう意味では、ごはんを大事にしていくこともそうですし、お米を作る場に還元していくこともやっていく必要があると思っています。まだそこまでは至っていないですが、サステナブルなごはんの世界といいますか、この先もずっと美味しいごはんを食べてもらうことを目指して色々なことをやっていきたいですね。
栗栖様
自社でいうと、ごはんは更に活用できる分量がありますので、まずはウエットティッシュを販売し、今後も更にごはんを活用していきたいと思っています。ごはん以外でも、ホームベーカリーからは小麦、トースターからはトースト、コーヒーメーカーからはコーヒー豆など、活用しきれていない食材は、今はどれも堆肥になっていますが、アップサイクルの可能性も探っていきたいですね。
また今は、社内の課題解決に近いので、他の飲食店のごはんのアップサイクルなど、本当の意味での社会課題解決の事業にするにはまだ時間がかかりますが、頑張っていきたいと思っています。
その時に、ファーメンステーションにご期待いただくことや、一緒にやっていきたいことなどがもしあれば、お聞かせいただけますか?
栗栖様
売り先が見つかれば予算を確保し次の商品開発など色々なことができますが、無理な営業だと相手に不要なものを増やしてしまい、またゴミになる可能性から本質的ではないと思っているので、こういうものが欲しかったと共感し、大事にしてくださる方々と出会いたいです。
私たち自身も本業としてチャレンジしている部分ですが、貴社にとって価値あるものになる市場を創造していくチャレンジだと思っていますので、これからもそのような取り組みが一緒にできるといいですね。岩本様から、何かファーメンステーションへのご期待や、一緒にやれたらいいなということはありますか?
岩本様
象印として、ごはんに限って言えばすごい量のお米を炊いていて、今回のウエットティッシュで使っている量はそのうちの一部なので、エタノールを作って様々なものに転用できるといいなと思っています。そういう点では、ウエットティッシュ以外のエタノールの出口を見つけたいですし、それだけの量を生産できるキャパシティも広げていただけると嬉しいですね。貴社が広がっていくように、私たちもご協力できるところはしていきたいと思っています。
また、生活者の方のエシカル消費に対する気持ちを変えていくことが大事だと思っています。
地球のためになる商品を実際に買っていただくというマインドに切り替えてもらうためには、ファーメンステーションさんにもっと露出していただき、エシカル消費に対する理解や浸透を広げる啓発活動のようなことが、お互いにできればいいなと思っています。
酒井さんは、ご一緒に取り組んでいきたいことはありますか?
酒井
岩本様が仰ってくださったことを、外部の方から明確に聞けることはあまりないので、とても嬉しい気持ちでした。まずは、岩本様、栗栖様と一緒に、ずっと同じことを言い続けていきたいですね。
また、ファーメンステーションのスタートは水田(休耕田)の活用なので、さっき仰っていたごはんを使い尽くす、ごはんを楽しみ尽くす、その恵みを全て使い切るというお話はとても共感します。水田もごはんも同じで、目指している方向は一緒だと思いますので、なんとかして象印様の研究開発の方が美味しいごはんのためにずっと炊いていらっしゃるごはんを、更に活用できるようにしたいですし、エタノールも発酵粕もとても良い香りなので、もっと使いたいですね。
最後に、何かお伝えされたいことなどはありますか?
栗栖様
この商品には様々な意味合いがあると思っています。スタートアップとの初めての協業でしたし、「始動」プログラムを通じて始まった共創なので、始動メンバーを初めとする社外の方からもたくさん応援していただいています。
また、ホームページやプレスリリースの写真や動画などのクリエイティブに関しては、私たちが入居しているWeWorkなんばスカイオのメンバーで作り、多くの社内のメンバーにも手伝っていただくなど、身近な方たちと一緒に作ってきた、様々なご縁で生まれた商品ですので、是非とも成功の結果にしたいです。