BUSINESS | BUSINESS CO-CREATION

CASE STUDY

株式会社bajji 様

休耕田を再生し収穫したお米を活用。
サステナビリティを大切にし、
事業を行うスタートアップ2社の共同開発。

感情日記アプリ「Feelyou」を展開するスタートアップ企業のbajji様と共同で、ファーメンステーションが休耕田を再生し収穫したお米から抽出したエタノールと、事業を通じて森林生態系の再生支援を行ってきたbajji様が準備された青森ヒバの精油を活用し、ルームディフューザーを開発しました。業種は異なるものの、それぞれ独自のサステナビリティに関する取り組みを以前から行っていたスタートアップ2社が、どのように出会い、こだわり抜いた商品開発を行ったのか、bajji様にそのストーリーや想いをお話しいただきました。

カテゴリー
業種スタートアップ
未利用資源休耕田(米)
商品ディフューザー
対談ご参加者
株式会社bajji
代表取締役CEO 小林 慎和様
Feelyouプロダクトオーナー 多田 明奈様
株式会社ファーメンステーション
代表取締役 酒井 里奈
※聞き手 ファーメンステーション担当

INTERVIEW

「デジタルライフでもセルフケアを
日常に」という
ビジョンのもと
3つのアプローチで事業展開
早速ですが、bajji様が取組んでいる事業全般や、今回の取組みへ繋がるきっかけをお話しいただけますか。
小林様
株式会社bajjiは2019年4月に創業し、社員は現在10名のスタートアップです。bajjiでは「デジタルライフでもセルフケアを日常に」というビジョンを掲げています。セルフケアを日常にするためにとっているアプローチが3つありまして、1つ目が日記を公開するアプリ「Feelyou」です。2つ目が、今回ファーメンステーションと一緒に取組んだルームディフューザーや別で商品化を行ったオイルなどのセルフケアアイテムの販売です。そして3つ目が、環境問題の解決に繋がるサイクルです。
現在SDGsなどが叫ばれていますが、自分自身がボロボロだと環境へ気が回らなくなってしまいますので、まずはアプリとプロダクトでセルフケアをして、アプリを利用している世界中のユーザーにも良い影響を与え、その普段の行動が積み重なると、連動しているプログラムを通じて植樹が進み、環境問題の解決に自動的に繋がっていく、という仕組みを作りました。
この仕組みを「Feelyou Sustainable Cycle」と名付け、自分をケアすれば、周囲にも広がり、ひいては地球環境のことを考え始めることができる、アプリとプロダクトを使えば、自動的に環境に貢献ができてしまうというサイクルです。「デジタルライフでもセルフケアを日常に」と掲げているのは、コロナが終わってもオンライン比率はあまり小さくならず、1日の8割ほどがオンラインを駆使する世界になっていくと考えていますので、そのようなデジタルライフでもセルフケアができる場所をデザインしたいためです。
多田さんはいつ頃参画されたのですか?
多田様
私は2019年4月の立ち上げ時からメンバーでした。小林とは前職からの繋がりで、10名のうち8名が開発メンバーなので、開発と小林がやっている仕事以外のものを私がリードしています。
小林様
私が、1つ前の私の会社の社長を退任することになり、3人のメンバーが新会社についてきてくれました。私含めて創業メンバーが4名で、その後6名がジョインしました。
初期サービスからピボットで辿り着いた
感情共有アプリ「Feelyou」の着想
信頼の深いチームなのですね。創業当時の2年前から、先ほどお話いただいた3つのアプローチのような、サービスや価値提供のあり方や、サステナブルなサイクルを作ることは構想としてはお持ちだったのですか?それとも、変化してきたのですか?
小林様
創業当初は違うことをやっていて、「bajji」というサービスをしていました。「bajji」という名前は、胸につけるバッジからとっているのですが、当時はリアルでの出会いの深さを見える化するブロックチェーンのアプリを運営していました。主なお客様は、コワーキングスペースやピッチイベントなどのソーシャルネットーワキングのイベントをやっている方々です。
例えば100人が懇親会に来て2時間過ごしたとすると合計200時間とるわけですが、イベントに来た人たちの理想のマッチングってなかなか大変なのですよね。10人の人とお話しできたとしても、残りの90人の中に今日話したら良かった人がいたかもしれない。そのようなリアルの出会いの深さを見える化することによって、今日出会うべき人と繋がることをサポートするようなツールを作っていました。
2019年2月頃からそのようなツールを考え始め、次の会社を立ち上げようと創業メンバーに説明したところ、皆面白いと共感してくれたので、前職を退任したその日にジョインしてくれました。2019年6月末にプロダクトリリースをし、11月頃にVCから1億円ほどの資金調達をして、2020年1月15日にリアルな出会いを促進するサービスという内容で公式リリースを打ち出しました。ですが同じ日に、日本でコロナの第一号患者が出てしまいました。それまではかなりの速度でサービスは伸びていたのですが、2020年3月までに一気に成長率が99%落ちてしまいました。コワーキングスペースの会員も地方含めて10社ほどいて、「bajji」アプリを使うイベントを日本全国で毎日やっていたのですが、当然ながら以来今に至るまで1年半全部キャンセルしています。
そこで、2020年4月1日から別のサービスとして、「Feelyou」を始めました。最初はD2Cのリアルプロダクトは考えていなかったのですが、アプリを使えば使うほど植樹がされ、森を美しくすることに繋がるという要素は当初から入れていました。そこにリアルプロダクトを入れ始めたのは、2021年4月からです。
面白いですね。一般社団法人C.W.ニコル・アファンの森財団への寄付のことなどはプレスリリースで事前に拝見していました。関連して2点質問がありまして、1つめは、コロナの影響でサービスをピボットされたということですが、「Feelyou」のコンセプトをどう着想されたのか、どのようなことを成し遂げたる為に立ち上げられたのかという話と、最初はプロダクトの話はなかったということですが、何をきっかけにプロダクトが必要だとなったのか、という2点をお伺いしてもよろしいですか?
左:株式会社bajji 代表取締役 小林 慎和、
右:アファンの森財団 森田 いづみ 理事長
小林様
サービスのきっかけは2つあります。1つ目は、私はこのbajjiという会社含め何社も起業しているのですが、本にあるようなHard thingsや眠れない日が今までにたくさんありました。私は基本的に、愚痴などは誰にも言わず一人で全部抱え込むタイプなのですが、オンライン上に他のSNSではつぶやけないような独白できる場所があったらいいなと思ったのがきっかけです。
もう1つは、最初に運営していた「bajji」が難しくなった2020年3月のタイミングで、「Feelyou」みたいなサービスを使いたいなと自分が思ったことです。
実は「bajji」の公式リリースを発表する1ヶ月前の2019年12月頃、多田からマインドフルネスのアプリがシリコンバレーで流行っているという話を聞いていました。その時は、翌月になったら「bajji」を公式リリースしてリアルの出会いで踏み込む時でしたので、あまり気に留めていなかったのですが、3月頃にその話を思い出し、振り返りました。
その時に思ったのが、例えば、以前だったらブラジルの人が今何を考えているかは想像できなかったですが、今だったらブラジルの人もコロナで明日を不安に思っているということが想像できるということです。
コロナによってこんなにも世界中の人々の共通項ができたことは、実は初めてじゃないかと思い、多田からの先端ビジネスのインプットや自分の起業過程のハードな経験もあり、アプリで和らげることができないかと思ったことがきっかけとなりました。
多田様
私自身も、Twitterはバズ目的、インスタグラムは綺麗な写真をあげる、Facebookは知人に対する近況報告という、目的に応じた場所がある中で、純粋に楽しかったことや苦しかったことなど、なんでもないことを世界中の皆で書ける場所があったらいいなと思っていました。
私自身、女性のビジネスパーソンということもあり、世界中の頑張っている女性同士で楽しかったことや辛かったことをシェアしあうような場所を個人で構想している過程で、マインドフルネスが流行っているということを耳にしていたのですが、あまりピンときていませんでした。ですが、マインドフルネスを体験するイベントに参加した際、今に集中して、自分の今の気持ちに着目することは、ビジネスパーソンにとって有益だという話を聞き、気持ちを皆で認識して吐き出す場所という私の構想とマインドフルネスの文脈がつながりました。そこで、小林に私の考えを提案したところ、小林の考えにも当てはまり、実現に向けて動き出していきました。
アプリサービスだけではなく、
香りのプロダクトを手掛け始めた
きっかけと意義
小林様は、事業を始める時、様々な提案にも耳を傾けるのですか?
小林様
そうですね。今は多様性の時代なので、世代や性別だけでなく様々な職業など、自分の価値判断では判断してはいけないこともあると思っていて、そういうことをいかに取り入れることができるかが重要だと思っています。一度自分の中では、ないな、と思うことでも、数ヶ月後の新しい自分にとっては面白いと感じることがある。なるべく思い込みを排除するように意識してます。
一方、先ほどの2つ目の質問のプロダクト、いわゆる物販を始めたきっかけですが、最初の理由は実はビジネス要素が強いです。「Feelyou」アプリは、2020年7月にiPhone用、8月にAndroid用で、初めから英語メインで出しました。世界中にユーザーが広まったのですが、まだ無名のアプリということもあり、月額500円というサブスクリプションの課金率に非常に苦戦していました。
ゲームとは違いますもんね。
小林様
ゲームとは全然違いますね。アプリ課金だけがキャッシュポイントだと弱く、途中からD2Cも始めたいと思い立ったのが香りのプロダクトです。きっかけは、たまに行く高級ホテルは、フロントやどこに行っても香りが漂っていて、エレベーターが開いた瞬間、ここのホテルの香りはいいなと感じた経験を思い出したことです。
私たちは昨今家で働く機会が増えているので、家に香りが1つ加わるだけでも大きく変わるのではないかと思ったのです。物販を始めることで、作っている私たちの想いを伝えることができ宣伝もしやすく、そこからアプリの利用に繋げることもできますし、アプリのユーザーの方はECサイトの商品も割引で購入できるようにすることで、会社としてのトップラインを上げる手段として物販は良いと判断しました。
最初は、事業性から検討をされたのですね。D2Cを始めてから、アプリとプロダクトの親和性や繋がりなど、見えてきたことはありますか?
小林様
最初は事業面から物販を始めましたが、アプリからプロダクトを販売する事業としての意義を改めて捉え直した時に頭に浮かんだのが、スポーツブランドのNikeでした。Nikeはスニーカーを売る靴屋であると同時に「Just Do It」という夢を追う為のサポートをしています。
またNikeアプリでは、走った距離、スピード、道のりや日付などのランニング日記をとっています。
「Feelyou」では感情日記をアプリでポストし、D2Cの香りを基軸としたプロダクトでセルフケアを更に高めるという点では、近い事例だと思いました。Nikeはフィジカルで、「Feelyou」はセルフケアで、同じリアルとアプリの連動を実現できたら面白いと思っています。
徹底したリサーチから始めた、
初めての香りに関する商品開発
とてもよく分かりました。香りというテーマが出てからは、どのようなことから始められましたか?
多田様
弊社は2021年1月にFUNDINNOという株式投資型クラウドファンディングのプラットフォームを通じて、多くの方からご支援を頂きました。たくさんの応援を頂いたので実際に商品を作り始めることになったのですが、ものづくりが初めてだった私たちにとって、最初は何も分からない状況でした。ですが、「Feelyou」アプリを使ってくださっているお客様の感情に合わせて、楽しい気分の時にはもっとハッピーになり、悲しい時には癒してあげられるようなものを作りたいという軸はありましたので、そのような観点で、お花、アロマオイル、入浴剤やハーブティーなど色々な選択肢を考え、OEMメーカーを探していました。
ディフューザーに絞る前から、幅広く動いていらっしゃったのですか?
多田様
はい。情報収集から始めている中でファーメンステーションを見つけ、サステナブルというキーワードがあったので問い合わせをさせていただきました。どのOEM先の方とも事務的なやり取りしかなかったのですが、貴社だけが私たちの想いに興味を持ってくださり、作る理由や興味をもったきっかけを聞かせてほしいとお打合せのお願いを頂きました。
私自身、小さな会社の想いに興味を持ってくださったことがとても嬉しく、小林にもすぐに報告し盛り上がって進んでいきました。
お二人の中で、香り含めてプロダクトのイメージが生まれていて、小林様はビジョンの視点で考えられ、多田様は多くのリサーチをされている中で、何かがどこかのタイミングで重なり合ったのでしょうか。
多田様
そうですね。調べる過程で、香りは気持ちを和らげるなど精神に作用する効果があることを知ったので、香りがいいとなっていきました。
ファーメンステーションと出会ったきっかけに関連してですが、酒井さんから見て、弊社が応対させていただいたことや、お話を聞いた時に思ったことなど聞かせていただけますか?
酒井
最初からサステナブルというキーワードをお持ちだったことがまず印象的で、弊社のやっていることも知った上でお問い合わせいただけたことはとても嬉しかったです。
お問い合わせいただいた方がどんな方かと調べた時に、「Feelyou」はとても素晴らしいプロダクトだと思い、早速メンバー皆でインストールして、面白いと話していました。
実感として気持ちと香りがリンクすることは分かっていたので、お役に立てるのではないかと思いました。あとは、スタートアップからの商品開発のお問い合わせが初めてでしたので、珍しいということもあって全員で打ち合わせしたいと思い、お時間を頂いたという経緯でした。
多田様
ファーメンステーションのホームページを見た時に、このようなものづくりをしている会社とご一緒したら、クラウドファンディングで私たちを応援してくださっている多くのお客様からも、更に共感いただけるのではないかと思っていました。
青森ヒバの香りに惚れ込み、
調整に苦労しながらもこだわった
商品開発
今に至るまで、bajji様の方で決めなければならないことが多くあったと思うのですが、商品開発する上で悩まれたことや、考える時に難しかったことはありましたか?
小林様
私たちは別途、小さなエッセンシャルオイルを作っていて、その香りは柑橘系やブルーベリーなどの甘い香りにしたのですが、その時から私は青森ヒバで香りの商品を作りたいと思っていました。
青森ヒバは殺菌作用があり、住宅の木材としては高級で、日本独自の要素もあります。何より私がヒバの香りが好きで、青森県にあるヒバのお店を営む知人もいたのでいいなと思っていたのですが、エッセンシャルオイルを作るメーカーからは、ヒバは香りが強くおすすめできないと断られてしまいました。ですが今回、青森県のヒバと岩手県のお米は同じ東北ですし、組み合わせとしていいなと思いました。
私としては、もっとヒバの香りが強くても良かったのですが、皆さんの色々な意見を聞きながらヒバを抑えつつ、でもヒバらしさも残すという調整が一番難しかったですね。
多田様はいかがですか?
多田様
弊社はスタートアップなので、納期やコストには厳しくいかなければならないことに加え、小林からはなるべく早く、なるべく安くと言われていました。
貴社から商品の納期やロット、そして価格などを提示された時、経験がないのでそれが早いのか遅いのか、安いのか高いのか分からない中で、納期を短縮することを検討したり、そもそもこの商品でいいのかなど、調整には色々悩みましたね。
他にも香りが肝となる商品がある中で、貴社は今回ディフューザーにされたと思うのですが、その選択は迷われなかったのですか?
多田様
色々考えましたね。アロマオイルも候補にありましたし、貴社からマスクスプレーやロールオンタイプの香水もご提案いただいたのですが、「Feelyou」アプリは男女両方のユーザーがいらっしゃるので、男女兼用で使えるプロダクトであるということと、アプリ同様シンプルに手間をかけないセルフケアを念頭に置いていました。
貴社のご担当者から部屋に置いておくだけで効果がある手軽な商品としてディフューザーをご提案いただき、納得して決めました。
「Feelyou」を使い慣れているユーザーはどのような分布で、どのように使われているのでしょうか?
小林様
まず、170カ国にユーザーがいて、ダウンロード数は累計約7万件です。内訳は、2割が日本で8割が海外です。
アメリカとヨーロッパが多く、他には色々な国が散らばっているのですが、最近はベトナムと韓国のユーザーも目にするようになってきました。
気軽に安心して使っていただけるよう、個人情報を取らないようにしているので明確には分からないのですが、投稿から推測すると7割近くが女性ですね。年代は、10代後半から30代半ばが一番多いです。
使われ方には3つのタイプがありまして、悲しいことや怒ったことなど何かあったら投稿するタイプ、日記として日々の自分のコンディションを定期的に記録するタイプ、あとは読むだけのタイプで、人数比はそれぞれ1/3ずつですね。
多田さんの中でお客様像のセグメントがあって、どのような商品でどのような香りがいいかを考えられていったということでしょうか。
多田様
アプリのユーザー像はありながらも、20-30代男女で毎日仕事をされていてちょっとした癒しを求めているような方をイメージしながら、香りやパッケージは作っていきました。
酒井さんは作る側の立場として、ご一緒して苦労したことや他の企業とやる時と違ったことなどはありましたか?
酒井
さっき青森ヒバのお話がありましたが、これはとても面白く素敵だなと思いました。
もともと事業を通じて植樹されていますし、柑橘よりも木の方がやっていらっしゃること全体に近く納得しましたし、お知り合いの方のヒバの精油ということで、誰が作ったかが分かる精油が入るというのはトレーサビリティを大切にものづくりをする私たちにとっても嬉しいことでした。
ヒバの香りは本当に強く、ストレートだとお土産品のような雰囲気になってしまう懸念がありながらも、この力強さに小林様が強い想いを持たれていること、またご支給いただいたヒバの精油の香りがとても素晴らしく、ヒバを最大限生かして作ろうと決めました。
今までは、弊社でご準備した精油をご提案し使うことが多く、ご支給いただく精油でディフューザーを作ることは弊社にとっても大きなチャレンジでしたが、ご一緒して学びもありましたし、試作を何度も繰り返す中で香りへのこだわりを強く感じることができたので、私たちにとっても愛着のある商品になりました。
キャップが木製で商品全体から木のイメージが出ていて、大人っぽくとても素敵な商品になったと思います。
スタートアップ同士の出会いが生んだ
化学反応
先ほど多田様からは、弊社が事業や検討にあたっての想いを聞いてきたのが印象的だったというお話がありましたが、小林様の中でファーメンステーションとご一緒しようと思われた理由はあったのでしょうか?
小林様
貴社に決めた私なりの決定打がありまして、その理由はバンカー出身の酒井さんが今、岩手でお米からエタノールを作っているという経歴の面白さでした。どのようなきっかけでバンカーから、岩手でお米のエタノールを作るようになったのかと、非常に興味を持ちました。そのギャップが面白いと思い、貴社にしようと決めました。
何をやるかだけではなく、誰とやるかということを大事にされているということでしょうか。
酒井
バックグラウンドを知ってくださっている方はいますが、そこが決め手になったと言われたことは初めてなので、とても嬉しいですね。
小林様
バンカーとして働き始めた後で何かの出会いをきっかけに勉強し、全くゼロからこの世界に行っているのか、バンカーになる前からそのような想いがあっていよいよ踏み出したのか、きっかけは知りませんでしたが、バンカーという金融と、岩手県の稲穂の遠い距離感がいいなと思いました。是非、この対談でそのきっかけはお聞きしたいと思っていました。
酒井
ありがとうございます。新卒で就職活動をしていた当時、やりたいことが見つかっていなかったので、銀行に入って世の中を見ようと思い当時の富士銀行への入行を決めました。
入行後は、環境問題などの世の中の課題を解決しながら事業を大きくし、事業性と社会性を両立させたビジネスができないかずっと考えていました。なかなか機会がなく転職などして過ごしていたところ、偶然テレビで東京農業大学の教授が生ごみをバイオ燃料にする技術を紹介していて、私はプロジェクトファイナンスの経験もあったので、今までの経験も活かしながら何か新しい事業を作ることができるのではないかと思い、金融をやめて東京農業大学に入りました。
ゴミが何かに変わったらいいなと思っていたところ、偶然今の現場の岩手県の農家と役場の方が来て、休耕田を活用してお米を作り、それを原料にバイオ燃料をつくりたいという話があり、実証実験に関わるようになったのが今につながるきっかけです。
燃料では採算が合わないことが分かったのですが、休耕田をうまく使いたいという農家さんの想いに私も一緒にやりたいと思うようになり、何らかの形で事業を継続させたいと事業を受け継ぎ、商品として化粧品や雑貨を作ることになり、今に至ります。
小林様
思い描いていた通りのストーリーのある面白いお話ですね。私が思うに、新しいこと始めるきっかけは基本、行き当たりの出会いなのですよね。
私は分析した結果、一番評価が高いものを選んで始めたというのは面白くなく、人やニュースなどの外的な出会いをきっかけに、自分の中にある何かに気づくというような瞬間を大切にしています。
私も新規事業を始めるきっかけは、全て出会いベースでした。昔はコンサルタントをしていましたが、起業してからは自分で市場分析などは一切しないですね。
「Feelyou」アプリも、プロダクトに踏み出した時も、色々な出会いなどセレンディピティがありましたね。
小林様
そうですね、セレンディピティなものが入ると、運命を感じるといいますか、パワーをもらいますよね。
弊社の通常の商品開発のご支援の中では、なかなか意図して貴社のようなアプリを運営する会社にはご提案の機会がないですし、今回のお問い合わせがなければ出会えなかった気もしています。偶然にもご一緒させていただくことで、お互いにとって新しいチャレンジの機会となりよかったです。
小林様
今までこのようなものづくりはしたことがなかったので、とても楽しかったです。
お二方とも今回初めて本格的なものづくりをされたということですが、新しい気づきですとか、事業全体に関わる話として、今後に向けて湧いたインスピレーションなどはありましたか?
小林様
インスピレーションの手前でもっとこうしたいというのが1つありまして、生きているお米を使ったものづくりをしているので、岩手県の現場に行きたかったですね。事前に何も考えずに現場を見て歩いていると、また違うプロダクトのインスピレーションに出会うことが多いので、いつか行きたいと思っています。
多田様
実際に現場をお伺いして体感することができれば、お客様に私たちのこだわりやものづくりの過程をもっとお伝えできたのにと、この状況を残念に思ったりもしましたが、でもなんとか形になって良かったです。
小林様
サステナブルな商品であり、日本の「心」のお米で作ったエタノールが入ったプロダクトということで、お問い合わせをいただいています。単純に作るだけではなく、ストーリーがあり、SDGsに貢献するプロダクトであることで市場にも受け入れられていくと思いますので、大事に打ち出していきたいと思っています。
貴社の循環図もお客様にお示しし、お米が作られ活用されていく過程を説明しながら、販売していきたいですね。
企業のアイデンティティを表現できる
商品開発へ
プロダクトを実際に販売されての反響や、思わぬリアクションなどがありましたら共有していただけますか?
小林様
百貨店からお声掛け頂いたり、雑誌やサステナブルな商品を取り上げるメディアからお問い合わせを多くいただきました。近日中に「Feelyou Shop」(https://shop.feelyou.app/)の宣伝も始めるので、また違う反響がくるのではと思っています。
貴社としては今後弊社との取り組み以外も含め様々な事業展開を考えていらっしゃると思いますが、プロダクトまわりの話や、今後広げていきたい構想や想いがおありでしたら、お聞きしてもよろしいですか?
小林様
新しいプロダクトの具体的なアイデアはまだないですが、木の廃材や、本来捨てられていたものを活用したプロダクトができないかと思っています。
多田様
貴社が以前リンゴなどを活用していた記事を見て、先ほど小林が申し上げたような、木の廃材などを活用するといった、根本からのものづくりも一緒にやってみたいと思っています。
今回は弊社のお米の循環図をお使いいただいていますが、貴社ならではの木の循環図ができていくイメージですかね。
小林様
そのような循環はしたいですね。例えば、アロマディッシュにアロマオイルを垂らして置いておくと香るのですが、木の間伐材を使って作ることができますよね。アロマディッシュですと、プロダクトとしてはシンプルすぎるので、もう少し考える必要がありますが。
今回商品化したディフューザーは、今は国内販売だと思いますが、ユーザーの方は8割の方が海外ということも仰っていたので、地域的な広がりも含め、「Feelyou」アプリやbajji様という会社そのものの世界観や事業など、このように広げていきたいなど構想はありますか?
小林様
「デジタルライフにセルフケアを日常に」というビジョンで、それを助けるアプリやサービスを総合的にデザインしていきたいと思っています。
最近私は、大好きなSnow Peakを勝手にライバル視していまして。Snow Peakは「人生にも野遊びを」というコンセプトで、キャンプ用品メーカーではなく、人間がもう一度野生に帰ることを手助けするプロダクトを総合デザインしている素晴らしい会社です。ですが、現代人がキャンプに行けるのは年間多くて3回くらいだと思うので、残りの約330日はデジタルライフです。そのようなデジタルライフでも、キャンプに行って自然の中に浸かったようになれるアプリや、ディフューザーのようなプロダクトをどんどんデザインしていきたいですね。
その結果、更に地球環境が具体的に良くなることに繋がっていくサイクルを世界に広げていきたいと思っています。
家の外はSnow Peak様、家の中はbajji様となりますね。小林様の志向は、ものづくりに絡む企業は、国内外問わずベンチマークしていらっしゃるのですね。
小林様
ものづくりはもともと好きですが、単純にアプリだけの会社にはしたくないので、ここ最近特にベンチマークしていますね。
多田様が狙っている次の商品は何かありますか?
多田様
具体的な商品はまだ模索しているところですが、地球を守っていきたい、SDGs、ESGという文脈で何かしたいという想いがあります。そうはいってもまずは自分自身が満たされていないと、社会課題や地球に対してのアクションは取りづらいのではないかという弊社のコンセプトがありますので、まずは自分の気持ちを大事にするアプリや、香りで癒されるようなプロダクトを出しています。
自分を大事にしているだけで、知らないうちに地球環境を良くすることに繋がっているというコンセプトで打ち出していきたいと思っているので、我々としては香りを嗅いでいるだけで地球環境に貢献しているというような軸で商品開発をしていきたいですね。
酒井さんから、次一緒にやりませんかという具体的な商品はありますか?
酒井
たくさんあります!まず、木の周りは間伐材が多く出ると思いますが、香りのついた蒸留水なども取れるので、それを活用したディフューザーやアロマ、化粧品などもできます。ディフューザーはお部屋の中で使うものなので、自分を守るような空間を作れると思うのですが、持ち運べる香りもあったらいいなと思いました。
弊社の商品で、虫除け目的で作ったレモングラスのスプレーがあるのですが、気持ちを切り替える用途で使っている人も多くいるんですよね。
「Feelyou」では、疲れた時や気分を上げたい時など、使いたい時にいつでも身近に使えるものがあったら面白いと思いました。
あとは、海外のお客様が多くいらっしゃると思うので、グローバルに使ってもらえるプロダクトをご一緒できたらいいなと思っています。
小林様
配送が大変なので今は二の足を踏んでいますが、いずれはグローバルでやりたいですね。
最後に、ファーメンステーションと一緒にお仕事をしていただいて、弊社に対するご評価や、今後に向けて期待していることなど、エールも含めてありましたら頂けますでしょうか。
小林様
試作を作る時、たくさん並ぶ瓶を前に、現場で議論を重ねて手を取り合いながら進めるものづくりもあったと思います。
今のディフューザーには満足していますが、もっと一緒に試行錯誤したかったですね。コロナ禍なので仕方ないですが、オンラインには限界もありますし、今は東京から岩手の農家さんのところへ行けなかったことが心残りですね。
今回は、私が調達したヒバの精油を送らせていただきましたが、どのように使われるのかなど興味があったので、次回はより製作過程を深く理解し、もっと深く一緒に商品開発がしたいですね。
実際に同じ香りや同じ容器を目の前に置いて同時に嗅ぐと、また違う会話になりますからね。よりコラボレーティブな作り方は次回のテーマですね。
多田様
最初の温かいお打ち合わせから、最後の香りが完成した時に至るまで励みになるメッセージを頂き、ものづくり初心者の私たちにとって非常に心強かったです。是非今後もご一緒できるよう、商品の企画を考えたいと思っています。
貴社が色々な大企業とこだわったものづくりをされている様子を記事で拝見し、私たちももっとこだわったものづくりをやってみたいと思っていますので、その機会を作っていきたいと思います。
ありがとうございます。酒井さんからも、今後bajji様とこのようなことをご一緒したいなど、何かありますか?
酒井
いつも、長く愛される商品を作りたいと思っているので、まずは今回作ったプロダクトが大好きなファンの方をどんどん増やしていきたいですね。特に、私たちが持っている未利用資源だけでなく、bajji様がお持ちのものもあると思いますので、一緒にうまく使って未利用資源が人の気持ちをこんなにも変えることができるというようなプロダクトを出せたらいいなと思います。