BUSINESS | BUSINESS CO-CREATION
CASE STUDY
AKOMEYA TOKYO
(株式会社サザビーリーグ) 様
休耕田を再生し収穫したお米を活用。
生産者さんの思いや
原料の由来を追求した商品開発。
AKOMEYA様に、ファーメンステーションが創業当初から大切にしてきた休耕田という「未利用資源」を再生し収穫したお米の活用に共感いただき、初の外部パートナーとしてお米を原材料とした商品でコラボレーションが実現しました。両社が生産者さんや原料について共通の思いを持ちながら誕生した美容商品の背景にあるストーリーや、担当者の想いについてお話を伺いました。
カテゴリー
業種 | 小売業 |
未利用資源 | 休耕田(米) |
商品 | 石鹸、ネイルオイル、 ハンドクリーム、ディフューザー、 マルチバーム、アロマミスト等 |
対談ご参加者
AKOMEYA TOKYO(株式会社サザビーリーグ)
AKOMEYA事業部 事業部長 高井 伸夫様
※役職名は取材当時のもの
AKOMEYA事業部 商品部 第二商品課 バイヤー
大島 亜希子様
株式会社ファーメンステーション
代表取締役 酒井 里奈
※聞き手 ファーメンステーション担当
INTERVIEW
「お米」を出発点に
「お福分けのこころ」を
コンセプトに展開する
AKOMEYA TOKYO
早速ですが、お二方のご経験と現在のお役割について教えて頂けますか?
高井様
私は今まで2つの会社でアパレルのバイヤーとマーケティングを経験し、その後、株式会社サザビーリーグのアフタヌーンティーでティールームとリビング雑貨に携わってきました。これらの経験から、約4年前に「AKOMEYAを発展してほしい」と声をかけていただき、当時2店舗だったAKOMEYAを13店舗にまで拡大してきました。
アフタヌーンティー時代に出会ったのが大島です。
大島様
私は小売業のバイヤーとして13年間勤め、そのうち6年間はアフタヌーンティーで働いていました。一度サザビーリーグを離れましたが、高井から声を掛けてもらいAKOMEYAのバイヤーになり、4年が経ちました。
アフタヌーンティー時代の上司と部下だったのですか?
高井様
当時、私が商品本部長で、彼女が新入バイヤーでした。彼女の面白い点は、それまで商品開発を一度もやったことがなかったのに、次の日からバイヤーとして見事に成功し、なかなかの切れ者だという印象を持っていました。
AKOMEYAについてお話しいただけますか?
高井様
まず成り立ちから話しますと、AKOMEYAは私の前任の方が立ち上げたのですが、米屋であって、米屋でない、というその方の非常に良い想いから始まり、日本の食文化の根っこはどこにあるのかと私も一緒にブランドを掘り下げてできたのが、AKOMEYAです。
サザビーリーグが始めたアフタヌーンティーは、40年前(2021年7月現在)に創業者である鈴木陸三が、イギリスのアフタヌーンティーの文化、つまり女性が昼間から楽しくビスケットを食べて紅茶を飲むという新しい文化を日本に取り入れたら面白いのではないかと考え、渋谷のパルコにアフタヌーンティー 一号店を作ったのが始まりです。
日本の女性の日常を変えてしまったという、当時はきっと革命的な出来事だったと思います。
アフタヌーンティー文化ではティーとスコーンを楽しみますが、改めて私たち日本人の文化の根っこは何だろうと問い直したことをきっかけに、お米について研究し始めました。同じコシヒカリの種子でも育てる人によって色々なお米になっていくという点に着目し、それぞれの方が手塩にかけたお米を「○○さんが作ったお米」というように、顔が見える形で紹介したいという想いがAKOMEYAの始まりであり、コンセプトです。
どのように商品のラインナップを増やしていったのですか?
高井様
AKOMEYAのお米を美味しく食べていただく為、「一杯の炊きたてのごはんから、つながり広がる幸せ」というコンセプトをつけて、バイヤーが全国を歩いてごはんのお供を集めていたのですが、ごはんとごはんのお供だけでは商売として成り立たなかったので、暮らしの雑貨である、調理道具や食雑貨、タオルなど、日本の素晴らしい生産物も紹介していこうと直接生産者の方を訪ね広めていきました。私たちはお客様に商品を紹介するプラットフォームという考え方で、「AKOMEYA TOKYO」の店舗コンセプトは「お福分けのこころ」と決まっていきました。
「お米」と「由来や生産者を
大切にする心」でつながった
2つのブランドの出会い
どのようなきっかけで弊社との取り組みが始まりましたか?
高井様
ヘルスアンドビューティーをやるときにどうしようかと考えていた約3年前、大島が酒井さんと運命的に出会ったのがきっかけでした。当時、お米由来という点は大切にしながら、ブランドをストレッチできないかと考えていました。
ブランドストレッチの成功例は、そのブランドらしさがありながらも違う商品が出てくること。先程私が申し上げたAKOMEYAの「お福分けのこころ」「一杯の白いごはん」というブランドコンセプトと、ファーメンステーションが作るお米由来のものは、考えている心が一緒なので、違和感なく一緒に展開できると思いました。
お米から繋がり、ごはんのお供だけでなく、お米の為に頑張っていらっしゃる方の商品を紹介するという点で、やっていることも同じです。ブランドは、物ではなく心が一緒であれば広がっていくと思っています。
当時、ヘルスアンドビューティーの商品は店頭にありましたか?
高井様
当時は仕入れ商品だけ扱っていましたが、それだとAKOMEYAのスペシャルな商品になっていかないので、あくまで自分たちが開発するということを中心に考えていました。
芯や心の部分はお米から変わらず、領域としてのストレッチを考えていたのですね。大島様は当時、どのようなテーマでリサーチをされて、ファーメンステーションと出会ったのですか?
大島様
ヘルスアンドビューティーというカテゴリーをオリジナルでやるのは初めての試みで、且つ私も今まで携わったことがなかったので、一から始めるにはどうしようかと考えていました。
ブランドストレッチの本を読んで、単に商品を作るだけではAKOMEYAの大切にしているコンセプトから離れてしまうと思っていましたが、世の中にはそのようなものが溢れていました。
そんな時、展示会でたまたま稲穂が見えて寄って行ったら、酒井さんがいらっしゃりアロマスプレーが置いてありました。どのような商品か伺うと、水田の減反政策が進んでいることや、休耕田だった水田で栽培したお米をエタノールにしているという話を聞き、直感でこれしかないと思いました。
酒井さんは、当時AKOMEYA様を知っていましたか?
酒井
AKOMEYA TOKYO一号店が、私の社会人1年目の勤務地と近かったこともあり、できた時から知っていて、もともと大ファンでした。
以前、ファーメンステーションの商品を置いていただいたこともあり、循環のお話なども一緒にしていましたね。それまでファーメンステーションは他社とコラボレーションをしたことがなく、展示会では自社商品の紹介以外したことがなかったので、商品を一緒に作りましょうと言われた時は驚きましたが、とても嬉しかったです。
もともとファーメンステーションがやりたかったことは、自社商品の販売ではなく、休耕田や未利用資源の活用で、その根っこのところで一緒にやろうと言っていただけることはあまりない経験だったので、とても光栄でしたし興奮したことをはっきりと覚えています。
米農家さんを
訪問することから始まった商品開発
今まで続けてきた芯の部分が変わらないという、心が一致していたことが良かったのですね。最初のお話から1つ目の商品が出てくるまではスムーズでしたか?
大島様
私も酒井さんも初めてで分からないことばかりでしたので、話し合いながら進めていきました。
ファーメンステーションにとっては初めてのコラボレーション事例だったと思いますが、いかがでしたか?
酒井
辛かったことはなく、ひたすら楽しかったですね。特に良かったのは、早い段階でAKOMEYAの皆さんに、岩手に来ていただき、お米を生産いただいている農家の方にも会っていただいたり、エタノールの作り方、エタノールの特徴、発酵粕の使われ方などを深くご理解いただいたことです。
そして、この素材をどのようにAKOMEYA様らしい商品にするかと話した時、エタノールは香りと相性がいいこともありディフューザーとルームスプレーは最初に決まりましたね。
あとは、ヘルスアンドビューティーということで、発酵粕やエタノールは肌にいいのでどのように活かすか、そしてAKOMEYAのお客様が長く使えそうなものは何かと考えて、ハンドクリームと石けんが決まりました。全てにおいて、とても丁寧な議論がありましたね。
今回の事例に限らずAKOMEYA様として、仕入れではなく自分たちでプロデュースする場合に必ずこだわることや商品開発における大事なことにおいて、共通するポイントはありますか?
高井様
現在約3000点もの商品を扱っていますが、これほどの数になるとぶれてしまうこともあります。ですが、どんな時でもいつも立ち戻る心の拠り所は、やっぱり「お福分けのこころ」ですね。それはバイヤーであれ私のような立場の者であれ、商品のストーリーがないものはやらないと決めています。売れているからという理由だけではやらないので、結果それが消去法になっているのかもしれません。
今回の取り組みも、生産者の方やバイヤーの苦労、そしてどのように乗り越えてきたかなどのストーリーがあったから、パッケージにもこだわって作り上げることができました。ブランドにとって約束事を守るということは、やるかやらないかのジャッジだと思っています。ですので、ブランドの約束を守れない商品は、いくら世の中の売れ筋であっても私たちのお店で売ることはできません。お客様もそのように期待してくださっていると思います。
お客様からすると今回の商品は、まさかお米からこのような商品がという驚きと、お米にこだわる御社の約束のようなものも見えてくる、2つの側面を持っているのかもしれませんね。
高井様
時代がようやくファーメンステーションに追い付いてきましたよね。酒井さんのような創業者が一念発起してリーダーとなって、岩手の方々にも賛同してもらい、バイヤーと会ってここまでくるというのは、想いの強さがあってこそです。これからは、そのようなものが支持される時代だと思います。
商品の「仕様」だけではなく
「背景」が購入いただける
理由になる商品に
2社でこのような商品を企画して作っていくにあたり、社内でプランを通していく時などご苦労はありましたか?
大島様
私は酒井さんとお会いしてすぐにご一緒したいと思ったので、その足で高井に説明に行き、早い段階で良いねと賛同してもらえました。その後、社内からも良い返事をもらえました。
酒井
とてもよく分かります。時々お店に行くと、スタッフの方は私のことや商品の中身や特徴もしっかり覚えていてくださり、岩手に行ったことありますとか、このように使っていますなど、背景を正確に理解してくださっている方が多いですね。
大島様
今回、私も商品の理解に時間がかかってしまいましたので、スタッフにもきちんと伝えないとお客様まで届かないと思いました。なので、各店舗でスタッフに商品を説明して、理解してから販売してもらいました。当時は店舗数も増えていたので大変でした。ですが、ストーリーがある、または地域貢献に繋がるような商品が好きなスタッフが多いので、腹に落ちるまでは早かったですね。
販売した後、お客様の反応はいかがでしたか?
大島様
AKOMEYAにヘルスアンドビューティーの商品が突然並んだということもあって、皆さま興味を持ってくださっていました。ですが、お米由来と言われても見ただけでは分からない方が多かったので、背景を説明するとほとんどの方が買って帰られました。買うことによって地域の貢献にもなるといった、AKOMEYAらしい商品が好きなお客様が多く、スタンダードになってきていますね。
酒井さんの中で印象的だった反応はありましたか?
酒井
AKOMEYA様のお客様は、お話を聞いて下さる方が多いですよね。写真や田んぼの風景をずっと見て、商品の説明だけでなく背景についても興味を持って聞いて下さる方が多い印象でした。石けんを泡立てて触るとお米の香りもするので、食べ物の延長で使ってみようという方が多かったのは面白かったですね。
高井様
以前、お客様の調査をする機会があったのですが、一般的なスーパーの結果と比較すると、AKOMEYAのお客様は食や生活に強いこだわりを持っている方が多いということが分かりました。食においては、一般的には価格や味を気にする方が多い中、AKOMEYAのお客様は無添加など成分を意識している方が多かったです。
食品の裏の表示を気にする方が多いということは、御社がもともと大事にしてきたこととぴったり合っていますよね。今回このような商品が出て改めて振り返った時、ファーメンステーションが他のコラボレーション先とは違ってユニークだったという点はありましたか?
大島様
酒井さんという人がユニークでした。取引先との関係は、どちらが上とか下とかなくパートナーシップだと思っていて、その中で酒井さんが女性としても人間としてもかっこよかったので、とにかく一緒にやりたいと思いました。
高井様
ファーメンステーションのユニークさは、一つ決めたら必ず成し遂げるド根性があるところですね。休耕田の活用だけでなく、地元の人たちなど多くのステークホルダーからの賛同を得ながらやっていくには、相当芯が強くないとできませんし、考え方の根っこがぶれていないからなのでしょうね。ファーメンステーションのコンセプトを聞いてダメだと言う人はいないと思います。
また最近ではSDGsという言葉をよく聞くようになりましたが、ファーメンステーションはその前から取り組んでいるので、時代の先駆け的存在ですよね。
より多くの方に商品を届けることで、
社会的価値の発信を広げていく
最後に、今回の取り組みの今後についてと、御社のAKOMEYAブランドの将来の可能性についてお聞きできたら嬉しいです。
高井様
今回の取り組みを表現すると、お米を中心とした美の追求ということになると思うのですが、商品は今雑貨売場に置かれていますよね。今最も力を入れているのが、この雑貨カテゴリーの整理です。今は他に当てはまる表現がないのでヘルスアンドビューティーと呼んでいますが、自然にきれいに自然に健康というような、もっと太いメッセージを出していきたいと思っています。より研ぎ澄まされたコンセプトで、売場自体の面積も広げていきたいので、その為には商品の種類を増やすなど、どのように工夫していくかは課題ですね。原材料やプロダクトの担い手として、AKOMEYAらしく活動していきたいです。
カテゴリーとして、今回のような種類のものを広げていきたいということですね。
高井様
以前、とある酒蔵に行った時、そこに40年務めている女性たちの手が真っ白でとても綺麗だったのですが、そのようにお米のエキスを使っている作り手の方の写真なども展示するような売場を作っていきたいですね。
カテゴリーを広げていく上での想いはありますか?
大島様
ファーメンステーションとの協業を通じてカテゴリーを広げながら、今回の商品をもっと多くのお客様の手に取っていただきたいです。今後は、卸売も行い取扱店舗を広げ、より沢山の方に商品の良さを実感していただきたいとも思っています。
その軸はお米ですか?
高井様
植物や自然のものにストレッチした方が可能性はあるとは思いますが、AKOMEYAの軸はお米ですね。ですが、ブランドストレッチの要素は加えていきたいですね。
大島様
あとは、お米を作っている農家のアグリ笹森さんや岩手の周辺地域での地域貢献のことなど、もっと発信していきたいと思っています。
生産者の想いや背景など、商品に隠れているところの発信ですね。酒井さんからは何かありますか?
酒井
今は他社とのコラボレーションも増えていますが、AKOMEYA様は私たちの原点ですし、アグリ笹森のみんなもAKOMEYAの皆さんが大好きですね。そのような延長線上にできた商品なので、とても素敵ですよね。
ストレッチするとしたら、雑穀の生産で日本一の岩手のヒエヌカを原料として使った商品や、メーカーからも機能性を評価していただいている弊社の発酵技術を用いた発酵粕などが活きてきそうですね。良い原料を使って、AKOMEYA様のお客様がずっと使いたいと思っていただけるような商品を作っていきたいです。
この3年で、出し方や商品のラインナップなどできることが増えてファーメンステーションとしても進化したので、もっと良いものを長く使ってもらえるようにしていきたいですね。
通常は、機能性があった上でプラス社会に良いという商品が多いと思いますが、AKOMEYA様の場合、背景にこだわり、同時に肌もきれいになって環境にも良いという、全てが並列になっていますよね。そのような商品が映える売場や、共感していただけるお客様層なのかもしれないですね。
高井様
コロナの影響もあって、今後はそのようなものへの理解が進むと思います。
これまでとは違い、自分自身の心身を健康に保つことや、ここにはお金をかけるべきなど、コロナを通じて正しいものや大切なものを再認識させられていますよね。そのような意味でも時代が追い付いてきましたね。
最後に、ファーメンステーションに期待していることを教えていただけますか?
大島様
ファーメンステーションの活動を応援していますし、これからもついていきます。
高井様
ファーメンステーションの活動は、エタノールを抽出し、発酵の技術を使ってできたプロダクトを売るだけにとどまらないと思っています。生産物というより、考えていることがものになっているだけで、これからは考えそのものが活動や仲間に対してますます広がっていくと思っています。