BUSINESS | BUSINESS CO-CREATION

CASE STUDY

株式会社薬王堂 様

東北にある未利用の豊かな資源を有効活用。
環境にも人の肌にも優しい商品の開発を通じて、
地域貢献の循環を生み出し、
事業性と社会性の両立を実現した大企業とスタートアップの共創事例。

株式会社 薬王堂様とファーメンステーションは、相互の想いに共感し、東北の未利用資源を有効活用したスキンケアシリーズand OHU(アンオフ)を共同開発しました。商品の開発に止まらず、地域が持つ様々な課題に向き合い新たな接点を創出した今回の取り組みにおいて、至った経緯や担当者の想いについてお話を伺いました。

カテゴリー
業種小売業
未利用資源休耕田(米)、ヒエヌカ、ヒマワリ等
商品クレンジングオイル、洗顔フォーム、化粧水、乳液、リップ
対談ご参加者
株式会社薬王堂
取締役常務執行役員 経営戦略本部長(Medica株式会社 代表取締役社長)西郷 孝一様
株式会社ファーメンステーション
代表取締役 酒井 里奈
※聞き手 ファーメンステーション担当

INTERVIEW

東北地域に根差した店舗展開と
小売業の「メディア化」
早速ですが、薬王堂様の事業と、西郷様のお役割について教えていただけますか?
西郷様
株式会社 薬王堂は、岩手県で創業し、現在は東北六県で約360店舗を展開しているドラッグストアです。私のポジションは常務取締役で、経営戦略本部で経営企画や店舗開発の責任者をしています。新規事業や今回のような他社との取り組みの時に、私が先頭に立って進めています。
今回、企画の面で関わっていらっしゃる、Medica株式会社(以下、Med!ca)様について教えていただけますか?
西郷様
Med!caは薬王堂の100%子会社で、最初は主に薬王堂のマーケティング支援をしておりました。
今は、デジタルツールを用いたサービスや商品を通じて、薬王堂の店舗をメディア化する取り組みをしています。
薬王堂に来ると適切で必要な情報が得られる、必然性と偶然性が組み合わさったようなメディアとしての店舗を目指し、今は外部パートナーと一緒に、予測モデルやAIなどを用いたデータ収集の為のツールを開発しています。
薬王堂様は、東北に住んでいる方にとって、どのような存在ですか?
西郷様
普通のドラッグストアだと思いますよ。それが私たちの売りなので。
岩手県で道を走っていると何度も薬王堂様の店舗を目にしますが、意識して、店舗間の距離を近くしていらっしゃるのですか?
西郷様
意識しています。効率や信頼、そして安心を考えた時、小売業なので「人」が大事だと思っています。近い距離の方がマネジメントの効率も上がりますし、情報交換の面でもドミナント出店(編集注:特定エリアに集中して出店すること)必要だと思っています。
ドラッグストアなどの小売業は規模をどんどん広げていく傾向がありますが、多くのドラッグストアが、どこかのタイミングでマネジメントがうまく回らなくなり、何をしても売り上げが延びないという経験をする傾向にあります。
カギは人だと思っています。弊社と同規模のドラッグストアは離職率が大体30%ですが、弊社は6%です。これが最終的なSDGsだと思いますね。
薬王堂様に行かれるお客様の視点からすると、日常的にすぐに買い物にいける安心感が大きいのでしょうか。
西郷様
個人的にはドラッグストアに楽しみはいらないと思っています。普通に買い物しに来ていただき、来たことすら忘れるほど自然とそこにある存在というのでしょうか。裏で築いている土台の部分はお客様に見せる必要はないですが、商品に対する想いや私たちが力を入れていることはきちんと発信して、お客様にも知っていただきたいですね。
他のドラッグストアとの差別化にも繋がるポイントですね。今回の弊社との取り組みも貴社ならではのユニークな取り組みの1つになると思いますが、まずは経緯を教えていただけますか?
西郷様
知人からの紹介が最初のきっかけでした。正直、ファーメンステーションさんと話す前は、小売業が環境に対してできることはあまり多くはないと思っていましたが、中身から環境に良い商品を作っていくというお話を聞いた時に、私たちにもできることがあるかもしれないと、まず私自身の意識が変わりました。
日本の大企業は、海外に比べて環境に対する意識が低く、きちんとコミットメントしている企業が少ないと聞いていたので、逆にチャンスだと思いました。
小売業が持つサステナビリティに対する
バイアスとチャンス
最初、ファーメンステーションに対してどのような印象を持ちましたか?
西郷様
正直、具体的に一緒に何ができるかは分からない印象でした。私は薬王堂に入る前は大手消費財メーカーにいたので、コストや効率的な商品開発に意識が向いてしまうのですが、丁寧なモノづくりをする反面マス向け商品のように量産が難しい商品にビジネスチャンスがあるのか、本当に利益を出せるのか色々考えていました。ですが、お話を聞いているうちに、誰も追随できない市場のように見えてきました。
ベースとなるファーメンステーションさんの岩手県奥州市のラボや、地域との関係性もすでに作られていたので、市場における存在感は発揮できるようになると思いました。
色々な人に話を聞くと、皆コストや量産のことなど私の当初感じたことと同じことを言うので、反対にチャンスだと確信しましたね。
皆さまの中にバイアスがあるのでしょうか。
西郷様
経営者は男性女性関係ないですが、今回の化粧品を中心としたモノづくりにおいては、女性起業家である酒井さんならではの感性や丁寧に作ろうとする姿勢を強く感じましたね。私もそうですが、男性は効率化を図りにいく方が多い印象があります。
それらが組み合わさると、良いケミストリーがうまれるのでしょうね。酒井さんは、初めて西郷様にお会いした時どう感じましたか?
酒井
今までは小売りの方と話してもあまりピンと来ていただけないことも多かったのですが、西郷様はとてもよく話を聞いてくださる方だと思いました。岩手の日常と共にある薬王堂様とご一緒できたら、絶対に常識を変えられると確信していましたので、何としてでも形にしたいと強く思っていました。
西郷様
初めてお話を伺った時は7割ほどしか理解できていなかったと思いますが、その後いくつかファーメンステーションさんが取り上げられている記事を拝見して次第に紐解けていき、一気に始まっていきましたね。私の周りの方にバイアスがあったおかげか、そのギャップの可能性に気付き、興味がどんどん深まっていきました。
酒井
そう思っていただける方は本当に少ないので、今回の出会いは奇跡ですね。必然だったのかもしれないですけど。
東北の未利用資源を使った商品を
東北の方へ届ける
今回、商品についてはファーメンステーションの提案から始まったと思いますが、最初に提案したコンセプトと、5つの商品(発売開始時点)に決まった経緯をお話しいただけますか?
酒井
私たちからはまず、未利用資源を活用した商品を東北の方に届けたいとご提案しました。保湿に悩む東北の方が日常的に使うスキンケア商品を目指し、原料の良さを考えながら作っていきました。色々なフィードバックをいただいて改良を繰り返し、お客様のニーズに寄せていきましたね。
西郷様
私にとって、最初は商品の全てが環境に良くなければいけないというイメージでしたが、色々な方と話す中で、何かひとつでも今より環境に良くなることがスタートだと思うようになりました。全てがオーガニックの商品を狙いにいくと実現が難しくなってしまうこともあるので、この方針転換ができたのは良かったと思っています。
酒井
今回はテクスチャーを優先することになり、最終的には自信を持ってお届けできる、とても満足のいく商品ができたと思っています。
西郷様
今回は、リピートでのご利用を考えてテクスチャーを優先したことが良かったと思います。前職で化粧品に携わっていたこともあり、スキンケア商品は競合も多く、物の良さだけでなく、コンセプトもしっかり打ち出す必要があることを知っていたので、簡単ではないと思っていましたが、今となってはやって良かったと思っています。
最終的にスキンケアシリーズでいこうと決心されたのは、どのような点からですか?
西郷様
酒井さんとやり取りをする中で、やってみようと思うようになりました。もし化粧品のことをよく分かっていない経営者でしたら、リスクもあるので覚悟が決まらず、効率を考えて1つの商品から始めるとか、売れ筋商品だけを扱うという可能性もあったと思います。ですが、化粧品に踏み込むと決め、きちんと売ろうと思ったら、シリーズでの展開は必須ですので、やると決心して本当に良かったです。
酒井
商品がずらっと並ぶ良さもありますよね。
 
※薬王堂様とファーメンステーションで共同開発したスキンケアブランド「and OHU(アンオフ)」
https://andohu.com/
今後どのようにお客様にリピートしていただくか、横展開していくかが重要ですね。今回、作り手として一番こだわったポイントはどこですか?
酒井
新規原料も含め、原料をきちんと入れることですね。普通の化粧品は、原料メーカーのカタログから原料を選んで混ぜて作っているので、産地や顔が見える原料ということ自体かなり珍しいのですが、今回はそのような原料を一つだけでなく多く入れたというのは、チャレンジでしたね。
シリーズなので、全てに入っていなければ意味がないと思いましたし、入れるからにはお客様にとっての入るべき必然性も必要なので、その必然性にも合わせながら、工場とやりとりを重ねて作り込んでいきました。
西郷様
しっとり感や、つっぱらない保湿など使用感はとても良く、いいバランスが取れたブレンドになりましたよね。たくさんの原料を入れた結果、こんなに良くなったというのはすごいですよね。
酒井
入れることができた未利用資源は他にももっとあったのですが、機能面での必然性や伝えたい背景も加味して調整していきました。西郷様からのフィードバックもとても参考になりました。
西郷様
いいところにうまく持っていきましたよね。今回の配合は、ファーメンステーションさんと工場の方で決めていったのですか?
酒井
工場にもノウハウがありますので、一緒に決めていきました。工場からするとこんなに色々なことを言う相手は好まないと思いますが、一緒にチャレンジしてくださるパートナーがいるという点も、弊社の強みかもしれないです。
今回、色々な原料を使って社会や環境にインパクトがあることを広げていきたいというお話と、そうすることで商品の機能性や事業性も相乗効果で伸びていくような商品が実現できたことが、一番大きな点かもしれないですね。
西郷様
奇跡じゃないかと思いますね。
酒井
このブレンドと仕上がり方は、本当に奇跡に近いですよね。事業性と社会性が両立した事例になったと思います。
商品のクオリティと
本質的なサステナビリティを
両立したことへの
社内外の反響に手ごたえ
実際に商品の販売を開始して、どのような反応がありましたか?
西郷様
普段化粧品を扱っているプロの方々から、このようなコンセプトでモノの良さのレベルも高く、想像以上だとのご評価を頂きました。
それは、何に対する期待値のギャップなのでしょうか?
西郷様
オーガニックや環境系の商品に対するイメージとのギャップだと思います。環境に優しいオーガニックや自然派と言われるような商品がまだ少ない中で、自分たちが効率を要求されて作るナショナルブランドとの比較をした時に、今回の私たちの商品の品質が想像を上回ってきたということだと思います。
社内の方は、商品の中身や今回の取り組みに対して、どのようなご反応でしたか?
西郷様
弊社の経営陣は最初、オーガニック商品に対する経験もなかったことから、売れるのかという反応でしたが、時間をかけて説得しました。現場のメンバーは、モチベーションが本当に高かったですね。
どのような点が、モチベーションに影響したのですか?
西郷様
最初は、小売業としてSDGsに貢献すると言われても、なかなか想像できなかったと思います。ですが、自分たちが東北のためにも良い事業に関わり、できる貢献を実感したことは大きかったと思います。
あるメンバーは、普通のドラッグストアで当たり前のことをコツコツやる仕事だったのが、今回のような商品を通じて、新しいだけでなく世の中のためにもなる仕事にやりがいを感じていましたね。
今までの小売業のSDGsのレポートは、返品の削減や物流の改善などどこの企業も一緒でしたが、今回のような事業が本当に小売業がSDGsに貢献できることだと実感しましたね。
売り上げにも転換できますし、お客様に喜んでもらえることにも繋がりますよね。
西郷様
弊社のプライベートブランドのチームも私も、今回の取り組みをきっかけにモノづくりに対する意識が変わりました。自分が出す商品に対して、一つでも自信を持って優れていると言えるものをどのようにお客様に伝えるかこだわって考え、パッケージで表現するようになるなど、仕事の仕方が変わりました。私自身がハンズオンで関わっているからこそ他部署にも波及できるというのは、弊社の強みでもあり、人に依存しているという点では弱みでもありますが。
売り上げや、店舗でのお客様のお声はいかがですか?
西郷様
まだ発売してから期間が短いのでなんとも言えないですが、私の想像よりも多くの方に強く共感されている印象です。特に岩手では、大きく記者会見も行い、岩手の原料を用いていることもあり、響いていると思います。
一方、他県への展開や伝播はこれからですので、今後はメディアの活用や訴求ポイントを明確にしたコミュニケーションを通じて、共感を広げていきたいですね。
良い物ができて、お客様に伝わることも確認できたので、今度はどのように共感を広げていくかがポイントですね。
西郷様
オムロンのSINIC理論(オムロン創業者・立石一真氏が発表した未来予測理論)では、技術と科学と社会の3つが大事で、技術と科学が発展したとしても、社会つまりお客様がついてこないとうまくいかないと言われています。早すぎてもリーチできないですし、遅すぎてもだめですし、伝え方次第で伝わり方も変わってくるので、どのようにコミュニケーションするかが大事だと思っています。その点では、今回一部の方には響いていますが、人によって響く要素は異なりますので、環境・品質・地元など複数のメッセージの優先順位をつけ、可視化できるといいなと思っています。
大企業、スタートアップ、
地域のステークホルダーによる
オープンイノベーションの新たな形
酒井さんは、今回の反響をどのように捉えましたか?
酒井
全体的にとても良い反響を頂いています。今まで色々な企業とコラボレーションしてきましたが、様々な種類の喜ばれ方があるということを改めて感じています。
まず地域という側面でいうと、関係者の方々がとても喜んでくださっていました。弊社の岩手のメンバーは、自分の原料が商品になったというだけでなく、薬王堂様とご一緒することで親族が自分のやっていることをよく理解できるようになったと言っていたのは印象的でした。
また岩手の知人からは、客観的な視点が入ることで、岩手の良さや美しさに改めて気付かされたとか、生産者さんからは、自分たちの素材が使われ、頑張ってやってきたことが評価されて嬉しいと仰っていただき、やって良かったと心から思いました。
あと記者の方からは、スタートアップと大企業が同じ方向を向いて協業する優良事例だとも仰っていただけました。大企業の方の目線が入ることで、ビジネスと想いのバランスが取れた良い事例だとも言っていただきました。
西郷様
私も、協業における失敗事例をいくつも見てきた方から、日本で初めてのオープンイノベーターが出てきたと言っていただき、とても励みになりました。
酒井
あとは、スキンケアをはじめ多くのビューティー系のプロダクトを追っているビューティー関係の方から、サステナブルな商品はまだウォッシュ(編集注:サステナブルをうたいながら実際はそうはなっていないもの)が多くすごさが分からない商品もあるけれど、今回の商品を通じて酒井さんの普段発信していたことの具体的な意味がよく分かったと言っていただけたことは大きいですね。
弊社の自社製品は石けんとスプレーしかないですが、人々の日々の生活の中で使っていただけるラインナップで、非常に良い使用感に仕上がっているのはとても画期的だと仰っていただいたので、色々な見せ方で広めていきたいですね。
今回、手に取る理由を色々な角度から見せられる商品になりましたよね。
西郷様
今回制作した動画で、岩手県花巻市の雑穀のひえ生産者さんが「素材としての新たな接点を作ってくれてありがとうございました。」というようなことをおっしゃっていたのですが、その言葉がとても印象的でした。食用として作っていたものが、新しい接点である美容でも活かされるようになったことに対するお言葉でしたが、商品を作っただけでなく、今回用いた原料の新たな顔や接点を作れたことは良かったと思いました。
今回、田んぼの撮影でドローンを飛ばして撮影したのですが。普段は斜めから見る稲穂のイメージが強い田んぼを真上の角度から見た時に、田んぼが田んぼに見えない映像になることに気付き、見方によって一気に姿を変える一つの象徴だと思いました。
酒井
しかも、誰も見たことのない景色ですよね。
西郷様
素材や新しい接点というのも、見る角度によって全然違ってくるという意味では、田んぼに象徴されますよね。また接点を考えたら、弊社の社員も貴社の社員も、今回の取り組みで色々なことが語れるようになったのはすごいことですよね。
酒井
今までコラボレーションしたほとんどのお客様とは、商品完成後も意識的に声を掛けたり、売り場を見に行ったりコミュニケーションは取りますが、商品を納品してPRでご協力する以上の入り込みがなかなか難しいことが多いのが現実です。
ですが今回は、商品納品後も様々な情報をオープンにしていただき、一緒に商品の動きを追っているというのはすごく革命的なことだと思いますね。
西郷様
それは弊社の良い文化かもしれないですね。出してすぐ終わりではなく、その後のフォローや情報共有などを当たり前のようにする文化が根付いています。
今回の取り組みを通じて、社内に何か変化はありましたか?
西郷様
担当者は様々な面で大きく成長しました。特に印象的だったのは、コミュニケーションツールを通じた成長と、仕事を進めるスピード感における成長です。
今回使っていたSlackではコメントが形に残るので、普段から担当者がどのようなことを考えているかが明白に分かります。ですので、私も彼らには自分たちの考えを表現することの重要性を伝え、今では自社内でも日常的に活用するようになりました。
あとは、ファーメンステーションさんのスピード感があまりにも早く、メンバーは最初戸惑っていましたが、この経験を通じてかなり成長しましたね。
酒井
私たちもとても学びが多く、成長しました。
今回、ベースとなる考え方が2社の間でブレなかったことや、マネジメントレベルの西郷様がハンズオンで関わってくださり、スピード感を持って即断即決できたことは大きかったですね。
西郷様
私のフットワークは差別化になっていると思いますが、私だけの力だけではできず、担当者の成長が本当に大きかったです。
オープンイノベーションの一つの効用ですね。
西郷様
オープンイノベーションや他社との協業は、やはり会社と会社が握り合わないと難しいですよね。今回、デザインなどを含めると5社が関わっていましたが、とても良い関係性でスピード感を出せたと思っています。
社会課題のある現場に身を置く
地域に根差したプレイヤーだからこそ
創出できる価値
今回の取り組みにおける、今後の展望をお聞かせいただけますか?
西郷様
まずはこの商品で、東北を動かしたいと思っています。また、ブランドの目的でもある東北六県の素材を使った展開は必ずやっていきたいですね。
酒井
実は岩手に限らず、他県の方からも連絡を多く頂いていますので、私は各県に原料を求めて旅する気満々でいます。
東北各県の素材を使った展開もありますし、岩手シリーズがもう少し増えた先に、スペシャルエディションとして東北の素材だけを使ったオール東北の商品なども面白そうですね。
西郷様
東北の方々に知ってもらうという意味では、東北オールスターズでの商品はメッセージが響きそうですね。今回、最初にスキンケア商品から入ったので、次に何の商品にするかは正直とても悩んでいます。
ビッグメーカーでも苦労している商品などあるので、色々と検討しながらまたチャレンジしていきたいですね。必ず良い商品を展開していきますので、お客様には楽しみに待っていただきたいと思っています。
今後、商品の色々な面を見せていくというお話と、東北の皆さまにどのように共感を呼び、且つ作る側でもコラボレーションを生んでいくかというところが今後の展開のポイントでしょうか?
西郷様
そうですね。あとは簡単ではないですが、自治体を巻き込むなど大きなレベルでも動いていきたいですね。
最後に、今後のファーメンステーションに対するご期待など、エールをいただけますか?
西郷様
私たちは一緒に売っていこうとアクションを起こしていますが、そうでない会社もいらっしゃると思うので、ファーメンステーションさんは商品を作るだけではなく、環境に関連する商品の売り方のノウハウを伝えられたら良いと思いますね。その際に、エビデンスとして数値的なデータがあると、企業だけでなく投資家の方も理解をしてくれるようになると思います。私たちは今、データ分析には力を入れているので、何かお手伝いできればとも思っています。
考え方や商品の伝え方を考えると、数が出ていかない限りインパクトは出ないと思うので、そこは今後のチャレンジですよね。
西郷様
たくさんの顔がある分、難しいかもしれないですが、だからこそ計画的に色々と実験して、知っておくことは大事だと思います。
ありがとうございます。他に何か、言い残したことはありますか?
酒井
私からは、感謝の想いを最後にお伝えしたいです。記者発表で西郷様が今回の取り組みのコンセプトを紹介されているのを聞いて感動していました。ファーメンステーションが本来やるべきことは、コラボレーションを通じて一緒に未利用資源のアップサイクルを推進していくメッセージを発信する仲間を増やしていくことだと強く想うきっかけにもなりました。
西郷様
薬王堂の価値創造プロセスにおいて、他社に差別化できるポイントの一つとして、東北にいるということが大きいと思っています。自分自身もそうですが、メンバーも東北で生活している中で日本が抱える課題に先行して気付いているからです。
スタートアップの方々は、強い想いを持って社会を変えるようなビジネスを考えていますが、普通の大企業は社会課題に対する危機感や理解力が低い場合が多いですよね。
私たちは、過去の経験に引っ張られずに、様々なデータや経験を用いて社会課題を再定義し、他社と対等な関係でコラボレーションしていくことがとても大事だと思っています。
背景が全く異なる複数の企業が一つの方向に向かって走る際に、共感は非常に大事ですが、そう簡単にできるものではないと思います。そういう意味で、今回、同じ東北・岩手にルーツを持つ薬王堂とファーメンステーションさんが出会ったことはすごく大きかったと思います。私たちだからできる価値創造をどんどん仕掛けていきたいですね。