BUSINESS | BUSINESS CO-CREATION

CASE STUDY

株式会社ニチレイフーズ 様

冷凍焼おにぎりの製造過程で出るごはん残渣を活用。
サステナビリティ推進を加速するアップサイクル商品開発。

冷凍食品は美味しさを保ちながら長期にわたり保存が可能で必要な時に必要な分だけ食べることができるため、ご家庭での廃棄が少ないサステナブルな食品。そんな冷凍食品を提供するニチレイフーズ様が、主力冷凍食品の一つである『焼おにぎり10個入』を製造する過程で出てしまうごはん残渣をアップサイクルし『「焼おにぎり」除菌ウエットティッシュ』を開発。開発に至った経緯や担当者の想いについてお話を伺いました。

カテゴリー
業種製造業
未利用資源ごはん
商品ウエットティッシュ
対談ご参加者
株式会社ニチレイフーズ
マーケティング部 広報グループ 原山 高輝様
株式会社ファーメンステーション
代表取締役 酒井 里奈
※聞き手 ファーメンステーション担当

INTERVIEW

サステナブルな商品である冷凍食品を
事業にする企業として取り組む
廃棄ゼロへの取り組み
早速ですが、ニチレイフーズ様と原山様ご自身のご紹介をお願いいたします。
原山様
マーケティング部広報グループの原山高輝と申します。2014年にニチレイフーズに新卒で入社をしまして、そこから5年間、北関東エリアを中心に、スーパーマーケット等で販売しているニチレイブランドの家庭用冷凍食品の営業をしていました。その後、2019年4月に、広報グループに異動になり、そこから広報業務全般、特にオウンドメディアやSNS等のWeb周りの戦略等に携わっています。それ以外にも、広報としてニチレイフーズの事業活動全体に幅広く関わる中で、様々な企画に取り組んでいます。
会社のご紹介をしますと、ニチレイグループ全体では約6,000億円程度の売上(2022年3月期)、その中で私の所属するニチレイフーズが冷凍食品等を製造販売する加工食品事業を手掛けています。
その他にも、ニチレイフレッシュという畜産・水産を営む会社、ニチレイロジグループという低温物流を手掛ける会社、ニチレイバイオサイエンスというバイオサイエンス事業をやっている会社等がグループにはあります。
ニチレイの冷凍食品というと誰しもが知っているブランドですよね。
原山様
そうですね、ありがたいことに。
それでは、今回ニチレイフーズ様とファーメンステーションで共創することに至った経緯をお伺いできればと思います。背景としてはどういったことがあったのでしょうか。
原山様
冷凍食品というのは、特性として、保存が効き、食べたい時に食べたい分だけ食べることができる面があるので、元々フードロスを生むことが少ない、サステナブルな食品だと思っています。あまり声高に言ってはおりませんでしたが、実はSDGsという概念がある以前から、そもそも冷凍食品としてそのような特性があるんです。そういったサステナブルな事業・商品を大切にしてきた冷凍食品ナンバーワンメーカーとして、より一層フードロスの削減などで、SDGsに食品を通じて貢献していくということは、非常に重要だと思っておりました。
その中で、いろいろな価値はあるが使われていないものに新しく価値を見い出すという、「アップサイクル」という考え方を知りました。それまでも、我々は工場から出る製造残渣等は肥料や飼料にリサイクルしたり、安全性に問題ないものの外箱が破損しており流通のできない商品は子ども食堂やフードバンクに寄付するといった活動をしており、生産過程における食品廃棄ゼロは達成しておりましたが、アップサイクルまでは取り組めていませんでした。
その中でいろいろな会社さんとの連携を模索していたのですが、その中でファーメンステーションさんの発酵という技術が、アップサイクル、つまり元あった何かの価値を変える時に素晴らしいポテンシャルがある技術だなと思いまして、それでお話をお伺いしたというのが、今回の取り組みに至った大まかな背景となります。
食品廃棄をゼロにする取り組みは経営レベルのアジェンダなのでしょうか?
原山様
まず前提としては、弊社の中期経営計画はサステナビリティ経営を主軸にしていて、経済的価値と社会的価値の両方をしっかりと実現していこうとしています。その中で、ニチレイグループとして、2020年6月に、SDGsのゴール・ターゲットを明確にし、マテリアリティ(重要課題)の特定をしています。
ニチレイグループ全体が食に関わりますので、「持続可能な食の調達と循環型社会の実現」をマテリアリティの一つとして定義しています。その中で、サーキュラーエコノミーの推進をやっていくこと、全拠点で廃棄物のリサイクルを99パーセント以上にすること、などをアクションとして定義し、SDGsの「つくる責任 つかう責任」の12番にひも付く部分をニチレイグループ全体で推進することを宣言しています。ですので、経営の最重要課題の一つとして、フードロス削減や食品廃棄ゼロに向けた取り組みを推進しています。
春巻の皮の活用から始まった
アイデア出し、
商品として何を伝えたいかを考え
「焼おにぎり」に
今回、商品としては「焼おにぎり」の製造過程で出てしまうごはん残渣を対象にしましたが、当初はどういったアップサイクルのアイデアがあったのですか?
原山様
食品メーカーなので、最初はやはり食品に生まれ変わらせるというのがやりたいと思ったんですよね。スナックやお菓子など、アイデアは色々とありました。ただ、品質保証上の問題等もあり少しハードルが高かったんです。
なるほど。では、非食品で何ができるかと考えたときに発酵というキーワードが出てきたのでしょうか。
原山様
そうですね。我々の冷凍食品の主力の一つがごはんを原材料にした商品です。焼おにぎりやチャーハンなど非常にご愛顧いただいておりますし、冷凍加工米飯というカテゴリーでは一番取り扱いの大きいメーカーになります。お米と発酵という組み合わせは日本酒と同じで何か親和性があってできることあるのではないか、と思いました。
酒井さん、原山さんやニチレイフーズ様との当時の出会いや経緯は覚えておられますか?
酒井
はい、もちろん覚えてます。はじめは原山さんが有志の勉強会のメンバの方と食品関連の面白い技術やケースを研究されていて、その一環でお話を聞きに来ていただいたんですよね。最初のタイミングでは具体的なお話には至りませんでしたが、可能性を感じました。春巻の皮は活用できるかなどお話しした記憶があります。
最初は春巻の皮が候補として挙がっていたのですね。
原山様
最初、春巻の皮がありますよというお話をしたのは、ファーメンステーションさんが岩手の製造拠点で循環型社会を実現されているとお聞きして、春巻を作っていたのがニチレイフーズの宮城県の白石工場なので、東北モデルのような形で地域循環の加速にならないかと思ってアイデアとして出していました。
ただ、アップサイクルした商品が除菌ウエットティッシュになりそうだと企画が進んできた時に、一般の方に弊社のアップサイクルの取り組みを広く知っていただくには、やはり最初は多くの方が知っている商品が良いのではと思ったんです。その意味で、白石工場は業務用の春巻を作っている工場で、一般の方がご存じの家庭用の春巻は別の工場で作っているんですね。そうであれば、多くの方が知っている商品という軸で考えるのも一つではないかと考え、弊社の売上No.1商品「本格炒め炒飯」はどうだろうと発想が広がっていきました。ただ、製造過程で出る残渣が、チャーハンとして炒められて具材が入った、油分の入ったものが出がちだということで、これは発酵をするという意味で少し課題があるとなりまして。
そこで出てきたのが「焼おにぎり」でした。おにぎりは組成が非常にシンプルで、使用している原料も主に醤油、これはいけるんじゃないかとなりまして。しかも「焼おにぎり10個入」はロングセラーで、30年以上売っている商品なので、多くの方もご存じではないかと。色々な観点でバランスが取れたのが、この「焼おにぎり」だったという経緯です。
なるほど、ありがとうございます。そういう意味では、最初から出口を想定して動かれた印象を持ちましたが、それは原山さんにマーケティングや広報の観点があったことが大きかったのでしょうか。
原山様
それよりも、もともとファーメンステーションさんがやっておられたりんごの搾りかすや規格外バナナをアップサイクルした商品が、面白いな、こういうのできるんだという、驚きをすごく感じる商品だったことが大きかったですね。私たちも冷凍食品がウエットティッシュになる、という驚きを与えることはできるなと思ったんです。
そこにプラスして、驚いて終わりではなく、実際皆さんに手に取っていただきたいと思ったときに、親しみやすさが重要かなと思ったんですね。その時に、多くの方が知っていただいている商品にしたいという風にシフトしていったところはありました。
酒井
皆さん知ってますもんね。誰しも一回は必ず食べたことあるんじゃないですか?今も多くの人の冷凍庫に入っていますよね。
社内外にオープンに共創を進めることで
課題を一つ一つクリアしていく
一緒に商品開発を進めたり、協業を進める中で、印象に残ったことは何かありましたか?
酒井
情報を可能な限りオープンに開示いただけたことはすごく印象的です。お話を持ってきてくださった時に、ただ話を聞かせてくださいだけではなく、「ちなみに」と言って、ニチレイフーズ様で出ている残渣はこういったものですという一覧のようなものを見せていただいた記憶があります。春巻、クリームコロッケ、グラタン、ドリア、、、のようにどういったものを製造して何が出るのかという実践的なお話を最初からできました。もちろん秘密情報の保護等は最低限あったうえで、かなり胸襟を開いて、実情をしっかりと相手に伝えて何ができるかしっかり議論ができる環境を作っていただけたなと思います。
原山様
「何かできませんかね?」ではなくて、具体的に相談させていただいた方が進みますよね。実際、工場も「何のためにこれ調べて出すの?」みたいなところも多少はあったかもしれませんが、しっかりとこういう活動に使うためと目的をきちんと説明すれば、「いいですね」と協力してくれましたね。
関連して、何かプロジェクトを進める上で社内におけるハードルや難しかったポイントなどはありましたか?
原山様
社内で誰に話しても、よいことをやっている、素晴らしいことをやっているというのは、皆さん総意なんですが、前例の全くないチャレンジなので、色々な部門からの慎重に考えないといけないという指摘を含め、アドバイスを都度もらい、それら1つ1つクリアしながら進めていきました。ただ、本当に、誰に話してもよいことやってると言っていただけたことは後押しになったなと思っています。
今までニチレイフーズ様で食品ではないものを扱ったことはあったのでしょうか?
原山様
ほぼないですね。ほとんどすべてのことが初めてのことで、ルール等の整備も何もされてなかったので、循環型社会実現に向けて取り組んでいくんだという信念を貫き通したことは大事だったかなと思います。
酒井
ニチレイフーズ様のような歴史ある大きな企業様で、今までのコア事業とは少し違う事業というだけで取り組むハードルは高いと思うのですが、意思決定のスピードも速く、商品活用のアイデアも次々と出てきて、やっていて非常に面白かったです。
原山様
そのあたりは意識してましたね。やはり少なからず小さい問題は都度都度出てくるので、なるべく問題が小さいうちに発見して解決することを心がけていました。あとは、私が、「自社の資産をいかに結び付けて外の方に見せていくか」を常に考える広報の仕事をしながらこのアップサイクルの活動をすることができたので、色々なアイデアにつなげられたこともあったのかもしれません。色々な部署に協力してもらいやすい立ち位置にあったこともよかったのかなと思います。
会社を横断するテーマやアセットを知っている人がリードすることも大きかったのかもしれないですね。ファーメンステーションの視点からは何か振り返ることはありますか?
酒井
先ほどのお話のようにテンポよくプロジェクトが進んだので、常に前に進んでいる感覚がありました。ただ、これはどんなプロジェクトでも言えることではあるのですが、対象とする原材料の検証はやはり毎回気を付けますね。今回で言うと、色々な残渣から焼おにぎりを選んだ過程もそうですし、焼おにぎりの製造工程もいくつかのステップがあり、そのどこで出ている残渣を対象とするかで技術的な検討事項や原材料の特性が変わるので、プロジェクトの中では実際にサンプルをいただいて試験をしたりと検証には時間を使いました。
我々は発酵・蒸留時に出る副産物(発酵・蒸留粕)もゴミにせず家畜の飼料に使うので、その観点でも問題ないかなど確認すべき点がいくつかあります。日頃は何気なく食べているものも、実際に製造工程では色々な工夫のために使われている原料や調味料もあってそういったことも毎回学びです。
新しい概念を「面白さ」で伝え、
生活者に近寄っていく
少し話が変わりますが、今回できた商品のパッケージは非常に個性的で面白いですよね。
原山様
最初は、ファーメンステーションさんとの未利用資源の再生・循環パートナーシップであることから、私たちもファーメンステーションさんがこれまで色々な企業様と共創された商品のデザインのトンマナと合わせることも考えていたんです。ですが、表示等の決まった部分以外は好きにやっていただいて大丈夫ですと言っていただいたので好きにやってみました。
酒井
最初にデザインが出てきた時に弊社の中で沸きましたね。すごいのが来たと。一発で何のことかわかるデザインで、面白い。これがもしかすると消費者の方に伝える、一つのコミュニケーションの在り方、一つの答えの出し方なのかなということは思いました。ぱっと見て、面白い、楽しいというきっかけで手に取ることがあるのだろうなと。
生活者や世の中に商品や発信でコミュニケーションする際の考えみたいなものはあるのでしょうか?
原山様
私が業務を通じて意識をしているのは、「真面目にふざける」ということです。やはり食の会社なので、基本はすごく真面目な会社で、安全安心のとこはやはりふざけずしっかりとやりますよね、人の口に入るものですから。おいしく召し上がっていただくために、プロの調理工程をしっかり学んで、愚直にそれを再現していく。そういうところはずっと真面目にこつこつやってきた会社なので、それはぶらしてはいけないんです。ですが、それだけだとなかなかなじみがないよという方々もいらっしゃると思うので、やはりこういう分かりやすい、真面目にふざけたもの、インパクトのあるものでメッセージを伝えたいなと。
生活者に近づく手段という感じなんでしょうか。
酒井
ベースには、哲学やサイエンスがきちんありますよね。それでいて、真面目だったら伝わるんじゃないかという待ちのスタンスがないですよね。きちんと自分から歩み寄って伝えに行こうとする姿勢が、今回の商品からもにじみ出ている気がします。そこはファーメンステーションも学ばないといけないことかもしれません。
原山様
あとやはり、冷凍食品はとても便利でいいんですけど、売り場としては冷凍コーナー・什器から外に出られないんですよね。なので、冷凍とは違う温度帯ではニチレイのNマークがついた商品を取り扱っていただけることがこれまでほとんどなかったんです。例えば今(2022年10月時点)商品を扱っていただいているロフトさんは通常は冷凍食品を扱われないので弊社の商品はお取り扱いがないわけです。多分ロフトさんに来る方と、普段から冷凍食品を召し上がっている方は、重なる方もいらっしゃるし、重ならない方もいらっしゃると思うんですね。そういう方々にも、ニチレイというブランドや考え方を知っていただく一つの機会になっているのかなと思っています。ブランディングの活動にもひも付いてるかなとは思っていますね。ブランドに触れていただくところを増やすイメージです。
生活者だけでなく、社内外で今回の取り組みを受けて何か変化があったことはありましたか?
原山様
一番大きいのは、社外の方ではないでしょうか。プレスリリースやメディアでの報道を見ていただいて、あるいは商品自体を手に取って、ニチレイとだったらこういうことができるのかと理解いただけて、お得意先様をはじめ色々な企業様からご相談もいただけるようになりました。反対に、名刺代わりにこれを持って色々な企業へ話をしに行くこともはじめています。。今回の発酵によるアップサイクルを起点に、今後アップサイクルを色々なところでやっていく一つの機運を作れたと思います。
会社としての社会への発信という意味ではいかがでしたか?
原山様
食に関わる以上、フードロス削減というのは、SDGsがうたわれる以前から課題として取り組んできていまして、食品の廃棄をゼロにしていく活動はしていました。ただ、そういった活動を分かりやすく伝えたり、価値を付けて発信していくというのがあまりできていなかったので、今回のように具体的な商品の形になるとわかりやすく伝えられたなと思います。例えば、食品の廃棄をせず、家畜の飼料に使っていくなどは以前よりしていたのですが、こうやって餌になりましたと直接お見せすることも難しいですよね。
環境や社会的な取り組みでのプレスリリースのようなことも今回が初めてに近かったとか。
原山様
はい、そうなんです。ニチレイフーズならではのサーキュラーエコノミーへの貢献を少しずつですがお伝えしていけるといいなと思っています。
社内のご反応はいかがでしたか?
原山様
社内も最初、良いことやっていますねというレベルだったのですが、商品ができて露出も増えてくるにつれて、営業担当から商談に持って行くからいくつか欲しいというようなリクエストもいただけるようになりました。
確かに社内の担当者が「やったよ、やったよ」と言うよりも、社外から「見ましたよ」「話し聞きたい」と言われた方が、社内の方も「え、そういうふうに見てもらえてるの?」というように変わってくるとこありますよね。
原山様
そうですね、ただまだまだアップサイクルの概念の浸透は必要だなと感じています。例えば、「ウエットティッシュのシート自体がお米をつぶして引き伸ばしたんです」とかだったら単純でわかりやすいのですが、ごはんを一旦発酵・蒸留させてできたアルコールを使ってさらに商品にしているといった少し複雑な部分があるので。発酵の良い面でもある形を変えるというのが、良い面に出る時と、少し複雑で理解が難しくなる時があるのかもしれないですね。考えると、そうか、となるんですが。
酒井
1秒で店頭で伝わるものじゃないようなところはありますよね。そこはもう少しこつこつと事例を積み上げていく必要があるかもしれません。
原山様
そうですよね。なので、今回まず焼おにぎりでご一緒できたので、次に別の商品の規格外や製造残さを活用して、別の商品も取り組んでみたいと思っています。やはり1品ではなく、2品3品で横にシリーズで並んでいると伝わり方も違うと思うので。
酒井
そうなると、パターンが分かってきますよね。
「冷凍の機能」の会社と
「発酵の機能」の会社が
循環型社会に向けたタッグを組む
ご一緒に取り組みをしてみて、ファーメンステーションについてどういう印象の変化がありましたか?
原山様
プロジェクトをご一緒して、発酵の技術をコアに、本当に循環型社会を作ろうと本気で取り組まれているというのをさらに感じました。循環型社会って定義が曖昧なので、形だけ取り組むことも多分できるし、実際そういう人たちもいらっしゃるんですけど、ファーメンステーションさんは本気で取り組まれていますよね。
酒井
嬉しいです。ありがとうございます!
原山様
あと、私の中でニチレイフーズとファーメンステーションさんの共通点というのがありまして。ニチレイフーズって何の会社かと聞かれたら、商品としてはチャーハンもありますし、唐揚げもありますし、色々あるのですが、実は冷凍という機能の会社なんですよね。
一方で、ファーメンステーションさんも、お米の会社でもないし、田んぼの会社でもなく、発酵という機能の会社ですよね。発酵という機能を中心に据えられて価値を創られているなと。発酵の駅という会社名がぴったりきますよね。
私たちも、冷凍を中心に据えて、サステナブルな社会を作っていきたいというのが会社の思いでもありますし、私個人の強い思いでもあるので、本質的なことを進められてるファーメンステーションさんと一緒にやれるというのは、すごくうれしいし、本当に楽しかったですね。
酒井
面白いですね。ニチレイフーズ様、もともと好きな会社でしたけど、今好きさが増しました。
今さらですが、ニチレイ様の始まりは冷凍の何かから始まっているんですか?
原山様
祖業は、いわゆる氷を作る製氷業です。その後、冷凍倉庫業に展開し、戦後に冷凍食品事業に参入した形です。発酵が形を変えていく機能だとしたら、冷凍というのは冷やす力で形を変えないでおくような機能だったりするので、重なる部分と相反する部分がお互いあるのだろうなと思って、すごく面白い協業だなと思っていたりしました。
反対にファーメンステーションがニチレイフーズ様に対して抱いた印象はどうでしたか?
酒井
ご一緒できてすごくうれしかったなと一番思ったのは、本当に世の中の全員にとって身近なもの、誰でも知っているものを扱っている企業様とご一緒できた意義をすごく強く感じました。
私たちは世の中にあふれる未利用資源を活用したり、将来的にはもっと減らしていきたいと思っているのですが、今のステージは、そういった取り組みが常識ではないので、ニチレイフーズ様のような多くの方がご存じの企業様や商品と連携して、一人でも多くの方に課題やアップサイクルを知ってもらい、自分が使うものは未利用資源のアップサイクルでできていたほうが面白いなと思ってもらいたいですね。
そういう意味では、ニチレイフーズ様は、広げる力もすごいし、商品なども実感として分かりやすいし、毎日食べているものなので、確かにいつもおいしいものを食べる過程の中では、規格外が出てしまうんだなと想像してもらうことにつながっていくのではないかなと思っています。あとは、ご一緒する中で、原山様も他の皆さんも、会う方会う方が楽しんでいるというか、義務でとか、ゴミを何とかすべきだからとかではなく、面白いことどんどんしようよというモチベーションでおられるのは最高だなと思っていました。
身近な商品のアップサイクルを通じて、
アップサイクルをもっと
身近にしていきたい
今後に向けて、共創をどのように発展させていきたいかイメージがあればお教えください。
原山様
恐らく2つの方向性があって、1つは発酵をコアにして、色々な規格外や製造残さを、基本、でんぷんや糖分があれば発酵することができるのだと思うんで、それらをアップサイクルして商品にしていくことにお互いにチャレンジしていければと思っています。もう1つは、循環型社会の構築に一緒に取り組んでいくことですね。ファーメンステーションさんは岩手が拠点で地域の循環をしっかりやっておられると思うのですが、実はニチレイグループのニチレイフレッシュが同じ岩手で循環型の畜産をやっているのですよね。そういったところも巻き込みながら、より両社の循環の輪を広げていくというのが、ご一緒にできたりすると非常に楽しいかなと思っています。
いいですね!ファーメンステーションはどうですか?
酒井
まずできたらいいなと思うことは、もっともっと使える未利用資源の種類や量が増えたらいいなというのももちろんありますね。ニチレイフーズ様を通して、アップサイクルしたものに手を触れる人をすごく増やせると思うので。面白いなという反応を増やしたいですね。アップサイクルが自分にとって身近なものだということを、一緒に世の中の人に新しい価値としてご提供をし続けたいなとすごく思います。
そして、私たちがエタノールを作った後の発酵粕は家畜の飼料になっているので、ここでもニチレイさんとご一緒できたらさらに嬉しいですね。そこまで持っていきたいと今日改めて思いました。
原山様
「おいしさ」と「驚き」と言いますか、「焼おにぎり10個入」や他の商品をまずはおいしいなと思っていただいて、普段からご活用いただいていると思うのですが、プラスそれが形を変えて、こんなものになりましたよというのをお見せすることで、また一つ気付きというか、学びになればいいなと思いますね。
アップサイクルや循環型社会というのが自分からかけ離れたものではなくて、身近なものがそうなるというのが重要ですし、色々なものでそれを表現できたらなと思います。