BUSINESS | BUSINESS CO-CREATION
CASE STUDY
カンロ株式会社 様
カンロ飴の製造過程で出る販売できない規格外の飴を活用。
サステナビリティを加速する新規事業として、初めて非食品領域の商品開発にチャレンジ。
“Sweeten the Future 心がひとつぶ、大きくなる。”をパーパスに、「糖」の価値を最大化する事業を展開し、多くの方が知っている飴やグミといった商品を製造・販売するカンロ様。カンロ飴を製造する過程で出てしまう割れてしまったものや切りくず等の販売ができない規格外飴をアップサイクルしアロマスプレーや除菌ウエットティッシュを開発し、非食品領域の商品として直営店ヒトツブカンロでの販売を開始。開発に至った経緯や担当者の想いについてお話を伺いました。
対談ご参加者
カンロ株式会社
取締役執行役員グローバル事業本部長兼
フューチャーデザイン事業本部長兼経営企画本部長 村田 哲也様
デジタルコマース事業本部ヒトツブ事業部長
金澤 理恵様
株式会社ファーメンステーション
代表取締役 酒井 里奈
※聞き手 ファーメンステーション担当
INTERVIEW
110周年を迎え、
カンロの未来を作る新領域を
検討する中で始まったプロジェクト
早速ですが、カンロ様と村田様・金澤様お二人それぞれのご紹介をお願いいたします。
村田様
まず簡単に自己紹介ですが、私自身は、今、カンロのフューチャーデザイン事業本部、グローバル事業本部と経営企画本部、3つの部署の責任者をやっております。その中で、今回のファーメンステーションさんとの取り組みはフューチャーデザイン事業として関わらせていただいています。
当社の概要ですけれども、1912年に創業で、ちょうど今年が110周年の会社です。売上の多くが飴とグミで構成されていまして、この110年キャンディの専業としてやってきており、キャンディ専業で上場しているユニークな会社ではないかなと思います。
昨年、カンロが今後向かうべき方向を示す「Kanro Vision 2030」を2030年に向けたビジョンとして出しました。その中で、既存事業に加えた事業領域の拡大、グローバルとデジタルコマースの強化などを戦略として発表しました。私が担当するフューチャーデザイン事業も事業領域の拡大のミッションを持っており、カンロの未来を背負えるような事業に育てたいという想いも込めています。
ありがとうございます。金澤様、お伺いしてよろしいですか。
金澤様
私は、カンロの直営店事業「ヒトツブカンロ」の事業責任者をやらせていただいています。ヒトツブカンロ自体は、カンロ創業100年のときに100周年の記念事業として立ち上げておりまして、本年ちょうど10年目を迎えた事業になります。そもそもヒトツブカンロを立ち上げた理由としては、キャンディはすごく手軽に誰かにあげやすい部分があるんですけど、キャンディの価値を上げて、その人にあげるという行為を「ギフト」の形にしていきたいなという思いがあり、ギフトにも適した商品構成でヒトツブカンロを立ち上げています。誰かにあげたくなったり、誰かの顔を思いながら選びたくなったり、そういう商品づくりをして店舗を運営しています。
ありがとうございます。看板商品の「グミッツェル」など売り切れ続出ですよね。
金澤様
そうなんです。今、おかげさまで、10年前に発売したグミッツェルがYouTubeやTikTokなどで、ASMR動画(咀嚼音や食感の面白さ)を話題にしていただいていて、10年経って売り切れするほどのヒット商品に育ちました。丁寧にブランドとして育てて、それまでも、もちろん定番で売れていた商品だったのですが。
なるほど。デジタルが商材やお客様層との親和性があったということなんですかね。
金澤様
そうですね。加えて、コロナで実店舗が3ヶ月くらいクローズ、販売できる場所が無くなってしまいました。「どうやって売るのか」という状況もあり、急遽オンラインショップを立ち上げたんです。もう少し先にデジタルコマースを強化してオンラインショップ立ち上げを計画していたのですが、それがいきなりぐっと前倒しせざるを得なくなりました。カンロのサイトを一部利用したオンラインショップを始めて、お客様には銀行振り込みのみでお買い上げいただくという立ち上がりでした。
グミを買うために銀行振り込みというのはすごいですね。
金澤様
はい、バックオフィスの仕組みも超アナログで始めて。ヒトツブ事業部員みんなで「銀行振り込みありました」とチェックして商品発送するという作業をこの本社オフィスでやっていたのです。そこから徐々にご購入いただける感触をつかんで形にしていった感じでした。
すごくベンチャー企業ぽいですね。
金澤様
正直に言って、販売手段が無く在庫だけが積まれているという状況で、やむを得ずという部分もありますし、ヒトツブカンロが少し特殊だったのもあるかもしれません。コンビニやスーパーマーケットなどで売られている既存商品とは一線を画す感じで、大きい会社の中に小さい会社がもう1つあるような感じでした。
なるほど。今回の取り組みで第一弾の出口として、ヒトツブカンロという売り場で商品化が実現したのも、そういったベンチャー気質な事業というのもあるのかもしれませんね。
金澤様
そうですね。私たちは常に柔軟に対応していきたいなと思っていてるので、じゃあ取りあえずやってみようというところがあります。もちろん、最終的にローンチできないこともたくさんありますが。
村田様
会社としても、ヒトツブカンロという、直接われわれがお客さまへダイレクトに販売をできる場があるというところは大きいですよね。オンラインもそうですが、やはりスピード感を持ってできるっていうのはすごく大きいという気はしますよね。
廃棄を減らすだけでなく、
事業にしていくチャレンジをしたい
今回の取り組みについてお話聞かせてください。規格外の飴をアップサイクルし商品化するプロジェクトでしたが、その背景にあったことなどをお聞かせいただきたいです。
村田様
今回のプロジェクトのポイントであるサステナビリティに関しては、以前より製造等で出る廃棄の削減を、目標を決めて会社として進めてきていました。食品の製造では、製造の過程でどうしても不適格なものが出てしまいます。それらを可能な限り全て肥料や飼料の形で使っていくことは徹底してきていましたし、社内にもそういった意識はあったと思います。一方で、その不適格なものを事業につなげていくという発想には至っていませんでした。
今回の取り組みは、不適格なものを単純に処理するのではなく、自分たちの意思で事業の形に生かせる可能性があるということが、新しい取り組みだと思います。
金澤様
私も、何もしなければ廃棄されてしまうものを、何か新しい商品の形で命を吹き込むことができるんだと思って、すごくワクワクしましたね。不適格と言っても飴の規格外などはまさに糖そのものなので、糖としての価値はあるんです。私たちカンロとして糖の可能性をずっと追求している中で、新しい可能性があるんだなというのは、とても嬉しいものがありました。
ありがとうございます。ファーメンステーションとしてはカンロ様との取り組みのお話が出てきた時にどう思われましたか?
酒井
私自身がもともとヒトツブカンロはできたときから好きだったのでファンというのはもちろんあるのですが、未利用資源としての原料としても、糖はアルコール発酵に最適な原料ですし、カンロ飴自体が以前から世の中の皆さんに広く知られている商品で、シンプルな原材料で作られていて、原料としても素晴らしいものだということは知っていたので、是非原料として使いたいと思いました。
もう1つとしては、これだけ身近で皆さんが知っている商品に関わることができたら、その取り組みが伝えられることのインパクトはすごく大きいだろうなと思っていたので、是非ご一緒したいなと思ったのが始まりでした。
最初の商品化の企画は、カンロ様の事業に関する発表会でのお披露目に使うアロマスプレーでしたね。
村田様
フューチャーデザイン事業の発表会で今後のサステナビリティの取り組みのビジョンを伝える一つの事例として取り組むことを決めました。まずは販売品としてではなく配布サンプル品として取り組みましたので、やると決めてからは早かったですよね。
また、取り組みの検討と並行して、ファーメンステーションさんも参加されていたサーキュラーエコノミーの勉強会で色々な企業様の取り組みやファーメンステーションさんの考え、共創の事例などもお聞きできたことも大きかったですね。このサーキュラーエコノミーの考え方をフューチャーデザイン事業の一つの方向性にしたいと思えたことが、まずはやってみようと一歩踏み出すために大きかったと思います。
なるほど。サーキュラーエコノミーやアップサイクルといったテーマは徐々に取り組みとして増えつつありますが、まだまだ社会実装はこれからのテーマかと思います。事業としての可能性は感じられますか?
村田様
ポテンシャルはすごくあると思います。もちろん、自社が単独でそれを全てやることは難しいと思いますが、今回のファーメンステーションさんとの共創をきっかけにしながら、色々な企業様と連携しながらサーキュラーエコノミーのモデルを作っていくことには可能性を感じています。事業としてどう成り立たせるかという部分でもちろん課題はありますが、今後しっかりと事業性を検証していきたいと思っています。
金澤様
今後はアップサイクルやサーキュラーエコノミーといった要素が入ってくるのが、当たり前になってくると思っています。私たちもそこにしっかりと向き合っていかなければならないと思っているので、今回その入口に一緒に立てたということは非常に重要な機会だなと思います。
酒井
勝手ながら思うこととしては、今回の取り組みをきっかけに、サーキュラーエコノミーの考え方がカンロ様の事業の1つのベースの考え方になるといいのだろうなと感じます。今はその考え方自体が差別化ポイントなのですが、今後は世の中的に当たり前になってくると思うので、逆説的ですがカンロ様のブランドの強さが生きてくるのかなと感じました。
規格外が出る理由やその使い道、
考え方をなるべくオープンにする
ありがとうございます。ご一緒にプロジェクトを進める中で双方が感じられたことなどあればお聞きしたいです。
酒井
あります!カンロさんの情報開示に関するオープンなスタンスはすごいなと当初から思っています。最初の発表会に参加させていただいた時に、カンロ様の製造過程で出てくる規格外の飴などがこういう感じでこの程度出ているんですと工程まで示されながら説明されていましたよね。あれはすごいなと思いました。どの程度情報を出すかというのは各社結構検討があることなのかなと思うのですが、どういったお考えがベースにあるのかは一度お聞きしてみたかったです。
私たちとしては、どのような過程で何が出るのかは原料理解のために大事ですし、例えば割れた飴は口の中に入ると口が傷つくリスクがあるのではじくなど、多面的な視点でケアした結果規格外が出ているという理解ができてすごく良いなと感じたのですが。
村田様
そうですね。まず前提としては、正しく伝えたいというのがすごくありましたね。事実として我々は規格外の飴を製造工程で出してしまうのですが、その事実とともに、なぜそうなるのか、そういった対応をせざるを得ないのかをしっかりと伝えることが大事だなと思っています。各工程でどういうラインでどういう作業をしているからというところの背景がわかると、規格外の飴が出てしまうことに対する理解をいただく一助になるのではと思っています。
やはり規格外の飴の量、数字をどうお示しするのかは社内でも議論はありましたね。数字を言うことは誠実に、ただ現時点でもしっかりとその用途を飼料や肥料として検討し廃棄は限りなくゼロに近づけていることはセットで伝える必要があり、正しい情報を誤解なく伝えるにはどうすればいいのかというところに一番神経を使った記憶があります。
酒井
ありがとうございます。私もそこはセットかなと思います。なぜ、どういうものがどの程度出ているのかという点と、それをどう活用しているのか。すごく素敵な考え方だなと思っていたのでお聞きしました。ありがとうございます。
村田様
一度両社の取り組みをテレビ番組で放映いただいた時がありましたよね。その際に規格外の飴を紹介する部分が映像で出たんですよね。映像はやはり文字、数字などよりも印象的にうつるのか、ご覧になった視聴者の方から、「もったいない」とか「割れたとか、少し穴が空いたとかぐらいだったら売ってもらっていい」といった声をいただいたりもしました。
酒井
まだ食べられるというお声は必ず上がってきますよね。一般的に、そういったこともあって、廃棄の量の話やプロセスをどこまで見せるのかという話になり、色々と差し障るかもしれないからぼかしておこうという企業もあると思うんです。その中で、カンロ様は最大限、どちらかと言うとオープンにしていくことを前提に着地点を探されるというか。そこは素晴らしい姿勢だなと感じますね。
金澤様
はい。可能な限りオープンであることを前提に考えたいと思っています。
既存事業の知見だけでは
乗り越えられない
壁へのチャレンジ
もう少し商品開発に関わる部分をお聞かせください。フューチャーデザイン事業の発表会での配布サンプル品から始まりましたが、その後販売する商品の開発へと移りました。その過程で課題になったことなどあればお教えください。
金澤様
そうですね。弊社はキャンディ、グミを中心とした食品のメーカーなので、とにかく非食品の商品をほぼ販売したことがないという部分のハードルが大きかったです。前例がなく、そして知識も一切ないというところから始まりましたので、どうするの?という感じに社内がざわつきまして。とにかく協力をあおがなければいけないので、色々な部署の方に商品を作るにあたっての担当者を付けてもらいました。経理もそうですし、カスタマーサポートや研究開発部門、法務、もちろん品質保証部でしたり、プロジェクトチームを作らせてもらって、一緒に作り上げていった感じです。
どういう点が社内で一番議論が生まれたポイントでしたか?
金澤様
一番議論が生まれたポイントは、やはり食品のスタンダードとの違いの部分ではないでしょうか。例えば飴であれば、水分は何%に抑えて、この配合にして、それであれば何ヶ月はこの条件下で品質保証ができるといったものがあるのですが、そのスタンダードがない状態でした。ファーメンステーションさんにも色々としつこくお聞きしたと思うのですが。
そうですね、、、そうではないとは言えないですね(笑)
金澤様
食品はやはり口に入るものを扱っている企業なので、少しオーバースペックに感じられたかもしれませんが、安全や品質は非常に大事な点です。商品としての企画もそうなのですが、お客さまからこういうお問い合わせがあったらどう答えるかということも見こさないといけないのもあります。どんな質問が来るか分からないというカスタマーセンターの不安を払しょくするためにFAQを作ったりしました。ただ、それを作ったおかげで、社内の皆が安心して発売ができたのではないかと思っています。
社内巻き込みというか、チーム作りの意味で必要なプロセスでもあったということですね。何か新しいチャレンジをするということと、食品の会社としての守りの部分とのバランスは難しいポイントですね。
金澤様
そうですね。難易度が段違いと言ったら語弊ありますが、キャンディの中での新しい製法、新技術などももちろん大変なのですが、それは社内の知見があって、色々な人の手を借りながら乗り越えていけるんですが、当社としては何も知らない分野なので、ファーメンステーションさんに相談しながらでないと進められなかった部分もありましたね。
ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。プロジェクトを通じてファーメンステーションへ持たれた印象などありましたか?
金澤様
弊社との共創もそうですが、色々な企業様と共創を展開されていて素晴らしいなと思います。ファーメンステーションさんはパーパスを常におっしゃっていて、そこに皆さんが共感しながら、一緒に何かを取り組みたいと思っておられるのではないかなと感じますね。
あとは、何か、すごく楽しそうに商品を開発されているなという印象が強いですね。私たちもその楽しくという部分はすごく共感しています。キャンディやグミという、すごく身近なものを扱っていて、人を笑顔にしたり、その楽しさみたいなところとすごく通ずるものがあるので。同じ方向を向きながら商品を一緒に作っていけるということを、私は勝手に思っていました。
村田様
私も、やはり前向きだなってということは常に感じましたね。あまり否定的な姿勢がないなということはすごく思いますね。難しいことがあっても後ろに引くという反応がなくて、これはこうじゃないですかという前向きな反応やアイデアをいただける印象でしょうか。
あとは、金澤も言っていましたが、まさに明るくというか、すごく皆さんがワクワクしながら仕事に取り組まれているということがベースにあると思います。
ありがとうございます。反対にファーメンステーションに対してこうしたらもっといいよということはありますか?
金澤様
共創の中での技術に関する部分のやり取りや開示レベルはやはり難しいところがあったかもしれないですね。ノウハウということはもちろん理解しているので、全て開示となると難しい部分も多いと思うのですが、一方で品質の担保やカンロとしての基準に照らしてどうかと考える上ではある程度承知しておくべきこともあるので、そのバランスが難しかったなと思います。
より深く取り組み進めるにあたってのお互いのオープンさのようなものでしょうか。
金澤様
そうですね。開示できるできないはもちろん実際あると思うので、そこはお互いに信頼関係を築きながら一歩ずつかとは思います。
村田様
我々ももっとファーメンステーションさんを知りたいし、見せられない部分ももちろんあると思うんですけど、もっと理解を深めることで、我々の発想も変わってきたりだとか、そういう関係になれればもっといいなというようには思いますね。
ソーシャルグッドなものを
既存ブランドの強みを活かして
世の中に広げるチャレンジ
商品の発表が近づき、徐々に情報を解禁していったと思うのですが、社内の反応がどのようなものであったか教えていただけますか?
金澤様
商品を作っていく中で、この度、ヒトツブカンロの10周年だったので、10周年を機に何か新しいことやりたいと思っていた部分もあり、そこにうまく関連させたいなと思って動いていました。少しずつ情報を解禁していく中で、メディア等から興味を持っていただいて、当社が少し新しいことをやっているということは良い印象でご評価いただけたのかなと思っています。
社内のチームという意味でも、私たちにはヒトツブカンロのデザインやブランディングを一緒に進めている外部のデザイン会社があるのですが、すごくワクワクしながら一緒に作り上げてくれました。こういう新しいブランドを新たに立ち上げる中で、より仲が深まったというか、一緒に作り上げた感があったので、インナーに対してもすごくよかったなと思っています。
よりブランドとして何をやっていきたいかが、中でもコミュニケーションができる形になったという感じでしょうか。ヒトツブカンロの商品として出したわけですが、社内で関係していない皆さんからのご反応はいかがだったのでしょうか。
金澤様
そうですね、新しいこと、面白いことをやっているねといった感じのことは言われていました。一方で、本社の中でも取り組みを知らない人も以前はいたりして、興味度合いは当初色々だったなというのが率直なところです。そういう意味では、もう少し社内コミュニケーションはしないといけないかなと思ったりはしています。
村田様
周りから見て、前向きな変化や新しい機会とはとらえてもらっていると思いますが、まだフューチャーデザイン事業やヒトツブ事業でやっていることと受け止められていて、会社ゴトとしての広がりはまだこれからかなと思います。事業としてどうしていくのかも関わってくる重要な点ですね。
ただ、テレビ番組で取り上げていただいて、多くの社員や取引先様から見たという声をいただきました。金澤も番組に出て取り組みの説明をして、カンロがこういった取り組みをしていることが社内外にわかりやすく伝わったのは良かったですね。まだぼんやりとしか伝わっていなかったところに、実例を持って新しい未来に向かって進んでいること、ワクワク感のようなものが伝わっているといいなと思いますね。
2022年9月に第一弾として規格外の飴由来のエタノールを配合した除菌ウエットティッシュをヒトツブカンロの新たなブランド「ヒトツブカンロearth」の商品として発売を開始していますが、お客様のご反応などがあればお教えください。
金澤様
やはり前提として、ヒトツブカンロの店舗に足を運んでくださる方は、基本的にキャンディやグミといったお菓子を目当てに来店されるんですよね。そこにウエットティッシュやタオルがあったりして(編集注:アップサイクルをテーマにした新ラインでは複数の雑貨を展開)、既存のお客様の来店動機とは少し違うものが並んでいるという感覚は実際あると思っています。最初なので、私たちも色々と試行錯誤している最中ではあるのですが。店頭で見ていただいて、初めてその存在を知って、かわいいとか、そういう感想はいただいておりますので、それをいかに購入につなげるかが課題かなと感じています。
例えば、既存のキャンディの商品と組み合わせながらご提案をしていくなど、商品の由来や開発背景なども含めて、きちんと丁寧に伝えることを店頭でどうやっていくかということだと思っています。
ファーメンステーションの方にも色々なお声が届いていると思うのですがいかがですか?
酒井
とにかく圧倒的にかわいいという声がありましたよね。今まで色々な会社さんと商品を開発してきていますが、今回の商品は元々の原料である飴自体のかわいらしさが活きている感じがしますね。スイートな感じの楽しい、かわいいものというのはあまり過去の事例でもなかったので、皆さん面白がって見ていただいている感じがあります。
先ほどお話のあった、来店動機とのギャップから単品で売ることのチャレンジはわかりますが、規格外や廃棄される可能性のあるものがこういう商品の形になるのは良いことだよねということがすごくイメージしやすいという声は聞くんですよね。ヒトツブカンロの商品は、友人に少し気の利いたギフトを上げたいとか、複数のママ友にお土産でとかいうシーンがあると思うのですが、そういう時にかわいい飴と一緒に小物をつける感覚で、少しソーシャルグッドなものをセットしてギフトするような提案ができたらいいんだろうなということは思っています。かわいいし、実はサステナビリティも考えているという会話が生まれるといいなと思います。
ソーシャルグッドなものが日常のシーンにいかに入っていけるかということですね。
酒井
例えば、ウエットティッシュって色々なシーンで使われると思うのですが、すごくお洒落な場所やかわいいものが集まっているシーンでも、なぜか普通のものをそこだけ出てくるじゃないですか。そういった時に今回の商品はすごく良いと思うのですよね。
あと、バッグの中からこういったかわいらしさとストーリーのある商品が出てくるのもいいと思っています。そういう選択肢があるということをもっと伝えていきたいと思いますね。
ブランド・商品を超えて
広く循環を考えていく取り組みにしたい
最後に、今後の取り組みやビジョンをお話しいただけると嬉しいです。
金澤様
ヒトツブカンロとしては、今回新しく立ち上げたブランドである「ヒトツブカンロearth」の充実を図っていきたいと思っています。いつかは、この「ヒトツブカンロearth」のお店を作りたいと思っています。ヒトツブカンロの店舗の中にあるのではなく、このブランドだけのお店ができるといいなという野望を抱いています。
あとは、今回の取り組みを進める中で、色々な企業様が似たような課題を抱えて困っているということもよくわかりました。社会課題の解決は自分たちだけでは絶対にできないので、ファーメンステーションさんはもちろん、他の企業様ともパートナーシップを広げて、新しいものを生み出しながら、このブランドを広げていきたいなと思っています。
村田様
フューチャーデザイン事業の視点では、この事業はサステナビリティとウェルビーイングをキーワードに事業を創っていくチャレンジを掲げています。その中で、様々な社会課題を解決していきつつ、事業としても成り立たせていくことが大事だと思っています。事業として成り立たないと、持続可能性がないですよね。そこは意識をしています。
また、未利用資源の観点で言うと、今回はカンロ飴の規格外を使いましたが、それ以外にも規格外となるものはあるので、それらをどうしていくかは課題です。究極的には、100パーセント全ての未利用資源を活用していけるといいですし、そのカギはサーキュラーエコノミーや循環型のビジネスなのかなと思っています。
ファーメンステーションさんとの取り組みというところでは、今回はヒトツブカンロの商品として始めましたが、フューチャーデザイン事業としても、ヒトツブカンロのチャネルとは別の形で商品開発をして事業開発をして、ヒトツブカンロとはまた別のお客様に向けた価値提供を模索したいなと思います。
ファーメンステーションとしてはどうでしょうか?
酒井
今お話しいただいたこと、是非ご一緒したいと思いました。私からは2つの視点でお話しします。
1つは、先ほどもお話ししましたが、今回すごくかわいい商品になったのがすごくよかったと思っているんですよね。理想は、普通にお買い物する人たちが、未利用資源だから買うという世の中にそのうちしたいとは思っています。一方ですぐには難しいかもしれないとも思っていて、かわいいと商品を手に取った方が、これって何でできてたの?と考えるきっかけになったり、それが複数の商品で色々な形で問題提起をできるのはいいなと思っています。それができるブランドがヒトツブカンロだと思うので、こういうメッセージを大事に込めながら皆さんに買っていただける商品をご一緒に出せたらいいなと思っています。
もう1つは、やはり、多くの未利用資源を使いたいなと思っています。規格外の飴などがすごくたくさんの量が出ているということもわかりましたが、まだまだ今回使っている量はごく一部です。それをどうやって増やせるのかなということは考えますね。ゆくゆくは工場自体に処理する装置を併設してという方法もあるのかなと思うこともあります。そこでアップサイクルしたエタノールを工場で使うこともできますし、商品にも活用できる。あるいはその地域でも活用して循環を作っていくなどもいいですよね。
村田様
今おっしゃった、地域も巻き込んでいくということですが、今回改めてファーメンステーションさんが東北や岩手で築かれている地域の循環や貢献の意義を認識しました。我々としても、これからの社会において、地域とどう向き合って連携するか、地域とともに成長していくかは欠かせない要素になるのだろうなと思っています。その意味でも各工場で何かができるとさらに取り組みに広がりが出そうですね。
金澤様
すごくいいですよね。社内からも、もっと身近に感じてもらえるようになるのかなと思います。ファーメンステーションさんの工場の石鹸はファーメンステーションさんの自社商品を使われていて。同じように弊社の工場にもカンロ飴からできた消毒液を使っているというようなことになると、より身近に自分たちの会社がそういうことに目を向けてることが分かりやすいなというふうに思いますし、愛着も湧くと思いますね。
酒井
色々な会社さんとご一緒させていただく時に、何が起きましたか?ということを聞くと、多くの企業さんが「社内が変わりました」ということをおっしゃるんですよね。自分の会社はそういうこともできる、やっているんだということを実感していただけるのだと思います。気づくと取り組みを応援する方や関わる方が増えているんですよね。是非、社会にもインパクトがあり、社内にも意義が出るような取り組みにこれからもしていきたいですね。