BUSINESS | BUSINESS CO-CREATION
CASE STUDY
宝酒造株式会社 様
大企業とスタートアップの垣根を越えて―
タカラ「発酵蒸留サワー」が生まれるまで
宝酒造株式会社 × 株式会社ファーメンステーション 共同開発対談
2024年9月に発売されたタカラ「発酵蒸留サワー」は、宝酒造とファーメンステーションが共同開発したアップサイクル原料を配合したRTD飲料※です。未利用資源である柑橘果皮から、発酵・蒸留というプロセスを経て生まれた新たな香味素材を用いた画期的な商品であり、2025年4月にはリニューアル発売を迎え、多くの注目を集めています。このたび、本商品の開発に携わった両社の研究・企画担当者4名が、商品の誕生秘話や協業の舞台裏、そして今後の展望について語り合いました。大企業とスタートアップがいかにして手を取り合い、社会的意義のある商品を生み出したのか、その舞台裏をお届けします。
※Ready to Drinkの略。蓋を開けてそのまま飲めるアルコール飲料を指す。
登壇者紹介(所属は対談当時)
宝酒造株式会社
商品第二部 今西 悠香様
宝ホールディングス株式会社
事業管理部 大﨑 学様
株式会社ファーメンステーション
CTO 杉本 利和
研究開発 徳永 智史
偶然の出会い、
互いの技術と取り組みへの共感
大﨑様
ファーメンステーションという会社の存在自体は以前から知っていましたが、当初は社名のユニークさが印象に残っていた程度でした。そんな中、事業管理部の同僚から「面白い取り組みをしているスタートアップがある」と紹介を受けたことがきっかけでした。
FS杉本
最初にお会いした際、宝酒造さんがとてもフラットに話をしてくださるのが印象的でした。私たちもアルコールの取り扱いに関する技術を持っており、共通の話題が多く、「何か新しいことが一緒にできるのでは」と自然に感じることができました。
今西様
ファーメンステーションさんは、技術力とスピード感の両方を兼ね備えておられました。当社もスピードを重視する文化がありますが、それ以上に機動力のあるスタートアップならではの取り組み方に刺激を受けました。
FS徳永
発酵や蒸留に関わるバックグラウンドが共通していたこともあり、初期の段階から技術的な話がしやすかった点も印象的でした。
技術と感性の交差点 ―
素材開発の難しさと醍醐味
今西様
開発初期で特に難しかったのが、酵母の選定でした。数多くの候補を試しましたが、それぞれに特徴があり、どれに決めるべきか非常に悩みました。
FS杉本
素材開発では、最終的に「感性」が鍵になることが多く、科学的根拠だけで判断できない場面も多々あります。ですから、お互いの感じ方を丁寧に言語化して共有しながら進めることが非常に重要でした。
FS徳永
香味の評価では、現場で一緒に試飲を繰り返しながら方向性を探っていきました。特に香りの繊細さをどう表現するか、どの程度濃度を調整するかといった細かい部分を、何度もすり合わせましたね。
今西様
官能評価を重ねる中で、「これはいける」という確信が持てた瞬間があり、そこからは一気に開発が加速した印象です。
大企業とスタートアップ、
それぞれの学び
大﨑様
私自身、スタートアップとの本格的な協業は今回が初めてでした。スピード感や実行力に圧倒されつつも、学ぶことの多い貴重な経験でした。最初は試験的に始まったプロジェクトでしたが、徐々に社内の機運も高まり、全社的な取り組みに発展していきました。
FS杉本
大企業との協業では、一歩目を踏み出すまでの重さを感じることもありますが、宝酒造さんは非常にスムーズに動き出してくださったのが印象的でした。共通のゴールを意識して動いていただけたのが心強かったです。
FS徳永
評価の軸や開発の視点を共有できたことで、専門用語を使った深い議論が可能となり、意思疎通がとても円滑でした。スタートアップとしても、こうした密なやり取りはとてもありがたかったです。
アップサイクル素材の可能性 ―
未利用資源の価値を再発見
今西様
今回使用した柑橘果皮は、当初は香りに個性が出すぎるのではと懸念していましたが、実際には複雑で奥行きのある成分構成で、処方に加えることで中盤の飲み応えを与えてくれました。
FS杉本
新規素材の製品化においては、品質や成分のブレを抑えるために、プロセス管理が重要です。宝酒造さんには当社の製造現場にも足を運んでいただき、工程設計や品質基準の検討も一緒に進めることができました。
FS徳永
これまで活用されてこなかった素材が、発酵というプロセスを経ることで、全く新しい香味や価値を持つ素材として生まれ変わる可能性を強く実感しました。
今後の展望 ―
さらなる協業、広がる可能性
今西様
今回の柑橘果皮以外にも、当社には未活用の副産物が多数存在しています。清酒や焼酎、調味料など他カテゴリーでの応用も視野に入れ、アップサイクル素材のさらなる可能性を探っていきたいです。
FS徳永
発酵は、既存の素材に新たな命を吹き込む技術です。今回の協業のように、素材そのものの特性を最大限に引き出しながら、製品として昇華していく取り組みを今後も続けていきたいと考えています。
FS杉本
アップサイクルによる資源循環は、一社だけでは実現できません。大企業とスタートアップが対等な立場で手を取り合い、技術・市場・価値観を融合させていくことが、今後のサステナブルな社会づくりに欠かせない要素だと思っています。
タカラ「発酵蒸留サワー」は、単なる商品の枠を超えた協業の成果として誕生しました。
大企業とスタートアップ、異なる立場と文化を持つ企業が、共通のビジョンのもとで力を合わせたことで、未利用資源の新たな価値を生み出しています。
つくる責任と環境へ配慮した消費が求められる中で、新たなものづくりのあり方を模索する一つの事例となりました。今後も多様なステークホルダーとの連携を通じて、持続可能で価値のある製品を社会に届けて参ります。