BUSINESS | BUSINESS CO-CREATION

CASE STUDY

全日空商事株式会社 様

規格外バナナを活用。
基幹事業において取り組む本質的な
サステナビリティ・SDGsへの挑戦

全日空商事株式会社様が、ファーメンステーションとの「未利用資源 再生・循環パートナーシップ」のもと、全日空商事グループ事業で出る規格外バナナを工業用アルコールであるエタノールへとアップサイクルし、商品化第一弾として「お米とバナナの除菌ウェットティッシュ」を開発・発売されるに至った経緯や事業化に当たっての取り組みをお聞きしました。

カテゴリー
業種商社(卸売業)
未利用資源バナナ
商品ウェットティッシュ
対談ご参加者
全日空商事株式会社
取締役(リテール事業統括) 小口 浩子様
総務部長兼サステナビリティ推進部長 森戸 正剛様
総務部総務チーム チームリーダー 竹島 かおり様
株式会社ファーメンステーション
代表取締役 酒井 里奈
※聞き手 ファーメンステーション担当

INTERVIEW

まさか規格外のバナナがという
新しさと面白さ
早速ですが、小口様が全日空商事内でご担当されている事業と、その中で今回の取り組みに至った背景や抱えていらっしゃった課題などあればお教えください。
小口様
私の担当業務は、空港の売店であるANA FESTAや免税店(ANA DUTY FREE SHOP)、ANAのECサイトのA-style、機内販売、その他ふるさと納税など様々なテーマがあるのですが、それら流通・小売り系の事業統括を行っています。

リテール事業に限った話ではないのですが、事業の過程で仕方なく廃棄になってしまうものやロスをいかに減らすかということは常に考えています。具体的には、空港などではショッピングバックや消耗品類を環境にやさしいものに変えたり、今回のファーメンステーションさんとの取り組みで関わったグループ会社のANAフーズで取り扱うバナナの規格外品は、一部飼料として提供しています。
そういった中で、ファーメンステーションとのお話が始まったということですね。
小口様
はい。廃棄ロスの削減やサステナビリティを考えている中で、規格外バナナのような未利用資源からエタノールを抽出する技術を持った会社があるということをANAホールディングスから紹介を受け、代表の酒井さんとお話する機会がありました。まさかバナナでそのようなことができるとは考えもしなかったのですが、お話を聞いて、それは面白い、他にも様々なことができるのではないかと、直感しました。これまでも規格外バナナは飼料等には活用はしていましたが、まったく別の製品、食品としてではなく、いわゆる雑貨製品になるとは思ってもおらず、そういった経緯で前向きにお話をさせていただくようになりました。
ANAホールディングスからお話が来た時、まさかバナナが、と思ったとおっしゃいましたが、社内で検討を始めるにあたって苦労された点などありましたか。
小口様
苦労は特にありませんでしたね。新しい取り組みとして面白い、やらない手はないなと。ANAグループとして各組織やグループ会社の得意分野を合わせれば実現出来ると感じました。社内でも話せば皆面白いねと受け止めてくれましたし、比較的早い段階で、社内を巻き込んで進められたかと思います。
竹島様は具体的に実務をリードいただく形になったと思うのですが、いかがでしたか。
竹島様
私も、面白いと思いました。小口の方から、なんとか今年度中に、形にしたいと2020年の秋ころに話がありました。私の役割は、進め方のスケジュールをたて、社内で巻き込むべき部署や、ANAフーズやANA FESTA、藤二誠など様々なグループ会社に協力をもらいながら道筋をつけ、なんとか2021年の4月に商品として世に出すことができました。商品を作るだけという思いでしたが、進めていくうちに、思い入れのある商品となりました。
サステナビリティへの取り組みが
グループ内連携のきっかけに
社内でも様々な部署と連携して動かれたのですね。
竹島様
今までもSDGsに関しては総務としても様々なことを身近なことで実行してきましたが、今回のようにグループで連携しながら何かを作るといったことはあまりなく、そういうことが出来た一つの良い事例だと思います。まさに今年度の当社の方向性も、組織や会社を超えて、新しいことにチャレンジしていこうという流れになっています。
当然これまでも色々な事業で社内の連携はあったのだと思いますが、今回の取り組みは、テーマや切り口が非常に新しくて象徴的なものになったのかもしれませんね。
竹島様
チャレンジしていいんだということは皆印象を持ったと思いますね。
小口様
そもそも総務がモノを作るということはあまりないことですし、今までの考え方の中では、どうして総務がモノを作るの?となり、営業部署からは違和感を持たれていました。

今回がある種の象徴になったと思います。サステナビリティの取り組みやグループ内連携のスタート元年。大事にしたいなと思いますね。
攻めの総務という感じがありますね。この4月でサステナビリティ関連の部署名も、CSR推進部からサステナビリティ推進部へと変更されたと伺っていますが、サステナビリティとして事業レベルの話にまでなってくると、本当に社内の色々な機能との連携が必要になってくるという良い事例かもしれませんね。反対に、ファーメンステーションの視点で何か印象はありますか。
酒井
色々な企業さんに最初に会う時に、私は大きなことやりましょうという風に色々とご提案するのですが、そうすると、相手の企業さんもどこから始めたらいいのかと整理がつかなくなってしまうことも多いのですが、今回は、色々やりたいことはたくさんあるけれども、まずはすぐに出来ることをスピーディーにやって、形にして見せましょうということを言ってくださって、それはすごく心強かったですね。私も経験上、形にまずなること、「モノとして見せること」がすごく社内外に示して巻き込むために有効なことはわかっていたので、そうやってすぐに実行を決めてくださったのがすごく嬉しかったです。
小口様
1つ形にすると、これほど皆さんが反応してくれるのかということは実感しましたね。話だけでは反応は薄い場合もありますが「モノ」になると皆さん興味を示し反応して下さる。
規格外が出る過程を
チームで知ることから始まった
プロジェクト
形にするまでの過程では、竹島様はスケジュールもタイトで大変だったとおっしゃっていますが、それぞれの会社の観点で何か難しかったことや難所みたいなものはありましたか。
酒井
プロジェクトが始まってからの大きな課題はあまり生じなかった気がします。ただ、先ほど小口様との出会いと開始に至るまでが少し長かったのですよね。最初ANAホールディングスの方とお会いして、発酵技術で未利用資源から色々とアップサイクルできるんですよとお話していたらバナナがあるよと教えていただいたんですね。それを伺って、バナナはいい原料ですよ、発酵に必要な糖質もあるし皆さん大好きで身近な果物だし、と言い続けていたんです。そうしていたら、熟成室(注:バナナは青い状態で輸入され、熟成室で追熟されて出荷される)があるから見学しましょうと連れて行ってくださって、その熟成のプロセスと職人芸に感動しました。

2回ほど伺って、こういうプロセスで有効活用されないバナナが出るということもよく理解ができました。私たちが大事にしていることとして、現場をきちんと見るということがあります。現場を見ないと、もしかしたら、そのものの本来の用途が別にあるかもしれないものを使ってしまうかもしれず、それは本望ではないので、色々な工夫が考えられた後に、確かに未利用になっていることを確認させていただきたいですし、どうしてそうなっているかということを伝えるのも私たちの仕事だと思っているんです。今回も、消費者の皆さんに満足いただける質のものを、物流で届けるためには、こういう状態のものは出荷できないとか、そういったものは飼料にしているとか、そういったお話を伺って、それでも未利用資源として残るものは原料としてぜひ使わせていただきたいというお話はしていたんです。

ただ、なかなか次のステップに行く形にならず、少し間が空いてしまっていました。大変というよりも、次に進むきっかけが見つけられなかったという状態でしたね。
小口様
この頃、私はまだ御社のこと存じ上げず、初めに耳にしたのは2020年の夏頃でした。
では、冒頭にお話があったように、そのお話が小口様につながってからはすごいスピードで展開したのですね。
小口様
ANAフーズで規格外のバナナが出てしまうということは、以前から認識していました。しかしながら、ANAフーズでは食品以外の商品を作って流通させる事業は行っておらず、想定もしていませんでした。この話をグループ全体の機能をつかって推進する役割がなかったのですが、私は流通・小売りの担当でもあり、私がその「つなぐ役割」になれると思いました。グループ各社は、それぞれの事業領域の中で役割を担い、力を発揮することには、プロですから抵抗感もなく、優れています。たまたま、それをつなぐ役割の人間がいなかっただけかもしれないですね。
つないでからは早く、たった半年で商品になったわけですね。以前から御社は、何か物事が決まり、船頭が決まれば、割と皆さん協力して物事がぐっと進むような風土はあるのですか。
小口様
どうでしょうか。船頭が良かったんですかね。(笑)
最初のセットアップというか、誰がどのようにリードするか、グループ内のリソースの集め方が非常に良かったのかもしれないですね。それさえ決まれば、会社がサステナビリティを重視する流れの中でぐっと進んだように受け取りました。
小口様
先ほど話にあったように、竹島たち本社部門が、すでにサステナビリティ推進に関し色々な議論をしていたんですね。そういった中で、ちょうどマッチする具体的な話として今回のプロジェクトに賛同し一緒に動いてくれたというのが大きかったと思います。これが営業の事業としてスタートさせる場合は、利益規模などの話が前提となり、進めるためにはそれなりの時間がかかる、まず作ってみるといったステージにはたどり着かないこともあります。実は最初は営業部門で進めることも考えたのですが、今回はサステナビリティ推進を入口として、まずは本社部門で動き始めてみようと考えました。
竹島様
私自身は儲けようという意識は一旦置いておいて、とにかく形にしたいという気持ちだけで動きました。SDGsやサステナビリティに資する取り組みを実現することが会社の価値を上げる取り組みとなることは理解していましたので、やった方が良いと思いました。
本業から生まれ、本業に還元できる
サステナビリティの取り組み
商品として形になって社内の雰囲気として何か変わったことってありましたか。
小口様
社内全体が興味を示してくれています。こう活用するといいのではないかという提案や、こういったところで使いたいから商品を回してくれという声も多いです。ただ、これが本当にビジネスとして成立するかは、皆様子を見ている感じですかね。(笑)

今後の可能性としては、今回作った商品をANAグループのチャネルをフルに活用していかに販売に乗せていくかという話もありますし、商品ラインナップをどう広げていくかという話もあります。また未利用資源を活用することに共感いただける外部の企業様との連携もあるかもしれません。そのあたりは試行錯誤しながら事業に落とし込んでいく道筋を作りたいですね。
社外からの反応はいかがですか。
小口様
当社のサステナビリティの活動があまり社外の方に知っていただいていないところもあるのですが、営業の際、今回作ったウェットティッシュを取引先にお配りすることをきっかけに実はANAグループでは…、という風に話を進められているようです。
酒井
田辺農園さんの知名度もすごいですもんね。私たちも含めファンがたくさんいます。
本業に良い影響が出るサステナビリティの活動はすごくいいですよね。今回の例ですと、バナナと規格外バナナから作った除菌ウェットティッシュをセット販売していくだとか、今回の取り組み自体を本業にすることを目指しつつ、もともとの本業の方もそれによってさらに良くなることは目指したい形ですよね。
南米エクアドルの高原地帯に展開する
「田辺農園」のバナナの“森”
小口様
実際、今回規格外バナナを提供したANAフーズも、当初予定よりたくさん活用したいと言っていますし、商品を販売している空港のお店ANA FESTAからは田辺農園のバナナと一緒に売りたいという声も上がり、すでに実現しています。
酒井
なるほど。それは嬉しいですね!
今回の商品は、本業の一つであるバナナの事業に関しても、サステナビリティに関しても、名刺代わりになる役割を担っている。反対に、ファーメンステーション側での反響や、ANAさんとご一緒してよかったことはありますか。
酒井
それはたくさんあります。私は、企業さんや金融機関など、多くの方にプレゼンする機会が多いのですが、今まで、こういうことしてますと言うと、うんうん、といったくらいの反応だったのが、最近ANAさんとの取り組みをリリースしましたというプレゼン資料を出すと、お名前の力の大きさというか、反応が全く違いまして、ファーメンステーションは信用できるねというような評価にもつながっている印象があります。

あとは、バナナの流通のことをご存じでない方も多いので、説明をきちんとするようにしていまして、ただ、運んでいるだけではなくで、食卓に届くまでに緑を黄色に変える大変さや技術の高さといった話をするのですが、皆さん、ESG投資やSDGsで何かしないとは思っているのだけれど、どうアクションとるか、何かプラスのイメージで社外に伝えるのが難しいという課題を抱えていらっしゃるので、こういう取り組みは、すごいいいですね、と言われます。うちも同じような事をしたいですとおっしゃる企業様が、ANAさんと組み始めて、俄然増えまして、見える景色が変わった感じがします。そういうことを考えている企業様は多いんだな、役に立てるなと改めて自覚を持てるきっかけになりました。

ご一緒に出させていただいたプレスリリースにも、「未利用資源 再生・循環パートナーシップ」という言葉を使っていただいて、私たちも今までずっとファーメンステーションは「未利用資源 再生・循環プラットフォーム」であるということを言い続けているのですが、ただ単に私たちが作った言葉ではなくて、そこの仲間に入りたいって思ってくださる企業様が、ANAさんが入ったことで俄然増えました。今回の取り組みを見て、全体を見たら未利用資源のまだ一部しかアップサイクルできていないが、それがプロダクトになって世に出ることでプラスの効果が伝わり、こういう取り組みを続けると、いつか未利用資源を全量活用できる日が来る、そういう常識をみんなで作ろうというムードにつながってきているのは、ご一緒出来て本当によかったことです。
サステナビリティを軸に
事業を展開できることを目指して
全日空商事様の方でも、今回をきっかけに、こういう広がりがあるといいというようなことがあれば教えてください。
森戸様
サステナビリティに関しては、弊社の中ではまだまだ勉強中という状況で、昨年度実施したのは、全社員に対するSDGsに関するe-Learningです。まずは、正しくSDGsを知るところから始めています。ベースが社員に広がったのが昨年度です。

今年度につきましては、まず私たちの部署もサステナビリティ推進部と部署名を変えました。これまでのCSRという表現はどちらかというと通常おこなっている事業とは違う部分での社会貢献というニュアンスが世の中的にも多かったと思うのですが、それプラスというか、本筋は、普段自分たちがおこなっている事業の中で、SDGsを正しく理解したうえで、貢献できる取り組みがひとつでも多く生まれるようにしていきたいと思っています。今回の取り組みで言うと本業の一つであるバナナをどう変えていくか。そういった事業を通じてサステナビリティに取り組み、事業の価値をさらに高めていく最初の事例として上手く活用させていただいて、いろいろな事業でいい材料にしていきたいと思っています。
小口様
今回のバナナの発酵で出た発酵粕を飼料として食べて育った牛(注:ファーメンステーションでは製造プロセスでごみゼロを実現しており、発酵粕を飼料として活用しています)も活用できる形になるといいですね。そこまで行くと循環が一巡するなと思います。もちろんプロダクトを広げることもありますが、ANAグループの環境目標に貢献できる取り組みとなるよう、アップサイクルする規格外バナナの量をまずは増やしたいですね。

どんな事業もSDGsに関われますし、逆に関わらないと社会が回らない。そういう社会にならないといけない。小さなことからの積み上げが世界を作ると思います。皆がそれを軸に出来るくらい意識高くいきたいですね。日常事業の中で、そのような意識の幹が太くなればと思っています。
最後に、ファーメンステーションについて、ご意見や今後への期待などがあればお聞かせください。
小口様
やはり、酒井社長の情熱や技術、強みの裏付けがあって、それを大切に、会社を立ち上げられて10年強進んでこられたことに敬意を評します。そこに集まる協力者がたくさんいらっしゃる、ここがすごいと思います。岩手にも拠点を持ち、お米の農家さんや、多くの方々が集まり一緒にやろうと思わせる、そこがファーメンステーションの魅力です。これからも、そのつながりがエネルギーとなって新たなつながりが生まれ、取り組みが広がる可能性を感じていますし、今後の展開に期待しています。